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2003年の横浜のお嬢様part2.../23.信頼される企業経営

登場人物(2005年時点)
幸田麗華 ワイン専門店コウテク社長 1976年(29歳)
幸田耕一  幸田商事 施設部長 1970年(35歳)
幸田大介 輸入商事 会長  1940年(63歳)

12月の良く晴れ日、テラスで耕一が雑誌を読んでいると、大介が隣の椅子に座った。

大介「耕一君、どうだね、最近の調子は...」

耕一「ええ、順調ですね。あの育児支援制度がターニングポイントでしたね。あれから業績は右肩の勾配が変わりましたね」

大介「ウチはね、従業員を大切にして成長することを目標にしているんだよ。麗華には、小さいときからそう教え込んだ。サントリーって知っているね...」

耕一「はい...」

大介「ウチはサントリーさんに近いかな。上場することは、かんがえていない。長期的な視野で経営することを重視しており、短期的な利益追求や株主還元を意識しない経営を昔からしている」

耕一「そうですね...入社した時から、それは感じていましたし、だから最近、一層それを感じています」

大介「最近の企業の動向をどう思う...」

耕一「多くの企業が、短期的な利益や株主のご機嫌伺いがで、法的に違反しなければ良いと言うぎりぎりで動いていますね。それで良いんでしょうか...」

大介「経営者が自分たちの利益しか考えていない。自分が重役の地位にあるときだけ、利益が上がれば良いという、実に身勝手な経営者が多いね、そんな会社はどうなるね...」

耕一「将来は厳しいでしょうね...」

とそこへ、麗華が二人を見つけて、会話の輪に入った。

麗華「あら、珍しい二人で真剣なお話かしら...」

耕一「ああ、お義父さんに教えを請うていたんだ...」

大介「麗華は、小さいときから、私の横で色々と見てきたから、別に特別な事では無いが、耕一君には一度話しておこうと思ってね...」

麗華「そうよね、曾お爺さんの頃からの考え方があるからね...」

大介「曾祖父は、インドシナ今のベトナムで貿易会社を興して、日本に移住してきたからね。カトリック的な考え方は強いね。利益の一部は必ず、従業員や社会へ還元する、ボランティアや芸術・文化へ援助する。だから、今回の幼児教育もそうなんだ、社会への還元の一部なんだよ...」

耕一「僕たちも、そう心がけます」

大介「麗奈を長女として、育てているのもそういうことだよ」

耕一と麗華の長女の麗奈は、養子である。耕一が麗華と結婚する前の恋人だった、白川萌奈が産みの母である。耕一と麗華の婚約寸前にそれが発覚したが、大介と麗華は動揺することも無く、直ぐに養子として育てることを、萌奈に提案して引き取った。

麗華「だから、まだ孫が欲しいということね、パパ...」

大介「あはは、察しがいいな...そういうことだ、頼むよ、耕一君」

と笑いながら大介は、ガレージの方へ歩いていった。

麗華「だって、それじゃー、寝室へ行きましょ...」

耕一「ええ、だってまだ午前中だよ...」

麗華「大丈夫よ。カーテン引けば、良いでしょ...」

と耕一の手を引いて、2階へ上がって行った。

それが、2005年12月の出来事だった。

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