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2007 彼女の恋人は彼女.../8.黒姫山の合宿走行会

Her lover is lady in 2007
[登場人物]
戸川 絵菜  大手製薬会社 つくば研究所勤務 研究員 1976
湯川 百合  独立行政法人農業研究所 研究所勤務 助手1980
戸川耕一  絵菜の夫 大手製薬会社 研究所勤務 研究員1970
湯河一郎  百合の夫  独立行政法人細菌研究所 部長1956
福山雅弥  建築設計事務所 所長 元トライアスロン選手
高峰由佳  インテリアデザイナー 元陸上選手
松山健一  大手出版社勤務 
東 祐子  弁護士事務所 秘書
幸田 湊  スポーツ用品会社 宣伝部勤務 元トライアスロン選手
松田雅也  スポーツバイクマツダのオーナー店長
白田球磨  バイクメカニック 

つくば市の中心部にある、オーダーメイドバイクショップ マツダの店内に、絵菜と百合が出来たてのオーダーメイドバイクを見つめている。

絵菜「やっぱり良いわね。このカラーリング最高。百合ちゃん、良いの出来たね…」

百合「ありがとう。絵菜ちゃんのお陰よ。このソフィーナブルー、良いわ。大切にするね…」

絵菜「早速、これで10月の黒姫山の合宿行こうか…」

百合「今回は、私がクルマ出すわ…」

絵菜「おっ、とうとうミニクーパーに乗れるか。途中、ハンドル握らせて…」

百合「なんだったら、全部運転して良いわよ…」

二人が行こうとしているのは、例年ショップがお客のために長野県黒姫山のロッジを貸し切り、二泊三日で走行会を行うもので、日本海側へLSDしたり、黒姫山へヒルクライムしたりとか、盛りだくさんのメニューで早くから予約しないと、中々行けないと言われていた。

今年は、二人ともマツダでバイクを購入していたので、優先的に予約が出来た。

10月 上信越自動車道を赤白のツートンカラーのミニクーパーが黒姫山に向かって走っていた。
絵菜「うん、中々良いわ、百合ちゃんのクルマ。ハンドリングもFFとは思えない位素直だし、パワーもあるし、軽快感もある…」

絵菜は、女性にしては珍しくクルマやメカニックに対して興味だけで無く、知識も豊富である。そもそも愛車が7年落ちのゴルフカブリオレというのも、それであろう。

百合「そう、喜んで貰えて嬉しいわ。ところで、今度の合宿に参加する女子は何人なの?」

絵菜「確か私達入れて6人かな。全員で30名だから男子は24名…」

百合「じゃー、モテモテだね…」

絵菜「いつもモテモテじゃないの…」

百合「そうだけど…」

絵菜「あのメカニックの白田は気をつけた方が良いわよ。良くない噂を結構聞くわよ…」

百合「そうね、スケベな目つきしているわよね…」

絵菜「百合ちゃんは、かわいこちゃんで狙われ易いから、特にね…」

百合「はい、はい、ママ...パパかな…」

今回絵菜と百合が黒姫山の合宿へ行くと噂が流れ、絵菜には3人から、百合には5人から一緒に行きませんかと誘われた。

いずれも女ふたりで行きますと、丁重に断ったが、いちいち誘ったり、モーション掛けたり、面倒くさいたらありゃしない。

なんで男って生き物は、バカなんだろう。自分の顔を鏡で見てから来いって、言ってやりたかった。ふー、先が思いやられる。

やはり、百合ちゃんと一緒に居るのが一番楽しいし、リラックス出来る。どうも体質的に男は合わないのかもしれない、既に既婚者だが。と絵菜はミニクーパーのハンドルを握りながら思った。

そんなで黒姫山のロッジへ到着する。どうも最後の到着らしく、既にシッテイングの調整は始まっていた。

ロードバイクは、その身体寸法や特徴に合わせ、ハンドル・サドル・ペダルの位置関係を調整しないと、長距離走やヒルクライムだけでなく、身体の故障の原因になる。

特にサドルとペダルの高さや前後寸法が重要で、オーダーメイドバイクが有利なのは、最初からその乗り手に合わせてフレームを作っているからだ。

百合のバイクは、百合の体に合わせて制作してあるので、微調整で済むが、絵菜は既製品を調整するので、乗りながら調整することも多い。

到着したその午後は、シッテイングの調整と近場を軽く乗り様子を見て終わった。

移動の疲れもあり、その晩は早めに寝た。女子部屋は3人部屋が2室で、ユカちゃんが同室で良かった。勿論寝る前のガールズトークは、大盛り上がりだった。

翌日は、日本海岸を目指し、往復120kmのロングライドなので、気合いを入れる。

マツダが運転するサポートカーも同行するので、途中リタイヤもありだから、気は楽である。

往路は下り基調なので楽だが、問題は上りの復路である。少しづつ緩やかな上り坂は、やっかいである。

30分上がったら頂上のヒルクライムはある意味登りやすいが、延々だらだら上りでここまでのロングも初めてだったが、意外と女子6名は無事、ゴールまで完走した。

いよいよ最終日は、黒姫山山頂までのヒルクライムである。

これも3時間弱ひたすら漕いでの登りである。

普段の不動峠が20分前後だからその6,7倍ある。

二人とも朝から気合い十分だった。実は、絵菜ら三人は、誰が最初に脚を付くのか、誰が脚を付かないで、頂上まで登れるか、掛けていた。

で、最初にユカが脚を付き、百合が脚を付かないで登り切った。

頂上のレストランの前で。

百合「ふふ、私の勝ちね。後で奢って貰うわ…」

絵菜「負けたわ、何を奢れば良いの。なんでも奢るわよ…」

百合「何にしようかな。ふふ…」

ユカ「二人、何楽しそうにしているの、お腹空いた、食べよう…」

食事後、記念撮影して、ダウンヒルは気持ちよかった。また、来ようと三人で話をした。

帰路のミニクーパーの車中。

絵菜「ヒルクライムのプレゼントは何が良いの?」

百合「何にしようかな。考え中よ…」

絵菜「何でもいいけど、早くして、気になってしょうがない…」

百合「ふふ、楽しみにしていてね…」

絵菜「なんか、不気味だな…」

翌週、絵菜と百合はつくばのデパートのジュエリーショップに居た。百合「どれが良いかな…」

絵菜「ええ、指輪なの…」

百合、絵菜の耳元で囁く。「エンゲージリングを頂戴…」

絵菜「えっ、エンゲージリン…」

百合「そうよ、私に頂戴…」

絵菜「そうか、それなら、当然ペアじゃなくちゃね…」

いろいろ見て、二人が選んだのは、ペアで1.6ctの指輪だった。

勿論旦那たちには、秘密なので、百合は平日は良かったが、絵菜は耕一に、しばらく秘密のままにした。

その後、耕一が神奈川に泊まりの出張で不在だと言うので、小野川の絵菜の家の寝室で、二人の愛を確かめた。

それが、2007年11月の出来事だった。

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