1996_横浜のお嬢様part1.../25. 別れと出会い
登場人物
会澤耕一 日仏食品 ビジネスサポート部 1970年(29歳)
幸田麗華 大介の長女 幸田グループ会社セダ 1976年(23歳)
幸田大介 幸田商事 社長 1940年(59歳)
佐藤愛子 幸田商事 社長秘書 大介の愛人 1966年 (32歳)
ルシア・マルガリータ・ロペス ワイナリー勤務 1978年(18歳)
有村かす美 国際線CA 1968年 (27歳)
江川直樹 日仏食品ビジネスサポート部 部長 1950年 (46歳)
白川萌奈 大手住宅会社 東京支店建築部門事務 1975年(24歳)
11月に麗華の妊娠が分かり、耕一も大介も喜んだ。
流石に麗華は自分の子であり、長女の麗奈は、耕一が前の恋人の萌奈と作った子なので、今回の喜びは一層強い。
麗華「こーちゃん、これで私もようやく産みの親になれる」
耕一「そうだよ、よかった」
麗華「あたし、もし子供が出来なかったら、どうしようかと思っていたの…」
耕一「バカだな…」
麗華は涙ぐんでいた。
先月の浮気事件以来、塞ぎ込んでいた麗華の気分は、これで少し変化した。また耕一も喜んだ、あのお仕置きは応えた。
地球の裏側に居ても、浮気を察知して耕一を引き戻すあの魔力とも執念とも言える麗華の力には、恐れすら感じた。
ある日、愛子に呼ばれた。
愛子「耕一さん、余り麗華さんに心配掛けないでね、あの人は、強そうに見えても、脆いのよ…」
耕一「わかりました…」
愛子「大介さんも、心配しています…」
耕一「...はい...」
自らの身のさびからでた話とは言え、周囲からこれだけ責められると、嫌でも自重せざるえない。
が、翌月の12月 ルシアからメールが来て、来日するという。
ルシアに会うなど、麗華には言えないので、どうしたものかと悩んでいると、東京の語学学校の講師の杉田という女性から連絡があり、会いたいという。
市内の喫茶店へ出向くと、なんとルシアも一緒にいるではないか。驚く耕一。
耕一「どうしたんだ、いつ来日したの?」
ルシア” Vine a Japón la semana pasada y como no pude reunirme con usted, le pedí al Sr. Sugita que se comunicara conmigo.”(先週、会えないから杉田さんに頼んで、連絡した)
耕一「もう、僕の事は忘れてください。もう会えない」
杉田が通訳する”Por favor olvídate de mí ahora. ya no puedo verte”
ルシア「..そうなの..」
ルシアの悲しそうな顔を見ると、可哀想だが致し方ない。
ここで心を寄せるとまた問題が起こるのは目に見えている。
お仕置きを受けてまだ2ヶ月である。
涙ぐむルシアの肩を抱く杉田が耕一を睨みながら、店を出る。
呆然として、取り残される耕一。
店の向こう側からそれを見ていた、幸田商事のスタッフの姿に耕一は気が付かない。
当然、それは麗華に報告されただろう。
その後、耕一はスペインやイタリアの有機農法ファームの仕事に集中した。但し、ルシアのワイナリーの担当は同僚に回したが、それから特に何も問題は起こらなかった。
そうこうするうちにクリスマスになり、教会のミサへ行くころになると、麗華の体調も落ち着き、年末年始休暇はスキーへ行くことになった、もちろん麗華は滑らないが。
レンジローバーに麗奈も乗せて3人で向かった。
麗華「久しぶりね3人で出かけるのも」
耕一「大丈夫かい、出かけて」
麗華「病気じゃないんだから、動いた方が良いのよ、麗奈も雪初めてでしょ」
麗奈は、雪が何だか分からない。
初日は、午後軽く滑ったが、久しぶりでまだ緩斜面しか行かないが、段段と感覚が戻ってきた。
やはり、スキーは気持ちが良い。
特に、滑るときの滑走感が気持ちよい。
数本滑り、ホテルに戻ると、麗華と麗奈がプレイランドで遊んでいた。
麗奈は雪だらけだった。
食事後ロビーを歩いていると、声を掛けられた。
振り返ると、何処かで見た顔が笑っている。
美人だが、誰だろう…。
かす美「あら、覚えていないのね。ANBの有村かす美です」
耕一「ああ、あの時の、どうも失礼しました」
かす美「ご家族で?」
耕一「ええ、そうです」
かす美「今度はいつ向こうへ」
耕一「多分3月ごろには」
かす美「そうですか、忙しいですね」
耕一「まあ、そうですね。どうですか、一杯?」
かす美「良いんですか?ご家族は?」
耕一「呼んできますから」と部屋に行き、話をすると、「良いわ。あなただけ行けば」と言われる。
耕一「話したんだけど、どうも娘が寝るので、遠慮すると..」
かす美「あらお子様も…」
耕一「1歳3ヶ月でようやく歩ける様になりました…」
かす美「一番かわいい時期ですね…」
耕一「かす美さんは独身ですか?」
かす美「一人娘が今度小学生に…」
耕一「へー、そんなに大きなお子さんがいるようには、見えませんね。最初、独身かなと思ってました…」
かす美「まー、お世辞が上手ね。そうやって、あちこちで粉掛けて回っているのね…」
耕一「そんな、思ったことを言っただけですよ…」
そんなたわいも無い会話だった。
彼女とはそこで別れた。