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2010_横浜のお嬢様part4.../ 12. オープニングは妻と愛人のバトル

登場人物(2007年時点)
幸田麗華  幸田G 社会福祉LPF社長   1976年(31歳)
幸田耕一  KGC建設 社長 麗華の婿       1970年(37歳)
土岐多華子 クルマ好き女優 耕一と愛人   1975年(35歳)
安西久美子 耕一の秘書           1981年(29歳)
高橋 直美 KGC建設設計部長 耕一の元愛人 1970年(37歳)
木名瀬 愛  日仏食品DM   麗華と愛人関係    1980年(25歳)

女優の土岐多華子が、幸田現代美術館のオープニングに来るという話は、あっという間にグループ内の社員の間に広まった。
当然、麗華の知るところとなり、彼女も又総務部長に確認をし、会長名で招待状を出したと知って驚いた。直ぐに大介に尋ねた。

麗華「パパ、オープニングに女優が来って聞いたけど、パパの知り合いなの...」

大介「いや、横浜経済界の知り合いから相談されてね、どうも本人が出たいと、まー、私もファンだから、喜んで招待しますと...いいだろう、彼女が来れば、場が華やぐし、客も大勢来るし、何よりPRになるからね...」

麗華は父親にそう言われると、納得したが、どうも何か引っ掛かる...

この時、彼女はその女優が夫の愛人だとは知らなかった...

このオープニング出席は、土岐多華子が巧妙に仕組んだ。
まず横浜経済界の重鎮達と面識があった彼女は、所属プロダクションから、横浜経済同友会を通してから幸田グループへ出席への打診をした。
その連絡は総務部長から会長の大介へ、そして江戸社長へ伝えられた。
オープニングは総務部が仕切っていたので、何の問題も無く、スムーズに多華子の出席はその他大勢と共に決定された。

だから麗華や耕一がそれを知ったときは、既に決定されていた。

耕一は多華子の出席を知ってからと言うもの、当日まで気が気でなかった。

まさか、当日彼女から自分へアクションが有るとも思えなかったが、正直彼女の真意を測りかねていた。

そして、オープニング当日になった。
司会から会長の大介、館長のかす美、来賓の紹介があり、その中に土岐多華子もいた。
やはり彼女の周囲は華やかさがあり、会場でそこだけ別な雰囲気があった。
それぞれの挨拶があり、テープカットでは、多華子もカットを入れた。
その周囲にはマスコミのカメラマン達が多数撮影しフラッシュが焚かれて、華やかな雰囲気になった。
それを一目見ようとファンも多数来ており、賑わい華やいだ。

それを耕一は離れて見ていた。
多華子はいつもより、綺麗に装い、シックなオートクチュールのドレスを着ていた。
遠目にも、人気女優という華やかさを振りまいていた。
麗華も側に居たが、芸能人と一般人の差は歴然として有った。

正に多華子が期待した通りの筋書きが進行していた。
セレモニーの後、内覧会に移り展示会場を一巡する来賓達と多華子がスタッフ達の所へ差し掛かると、彼女はスタッフ達に声を掛けた。

その中には麗華も耕一もいた。

多華子が麗華に声を掛けると、
麗華「今日はありがとうございます。幸田麗華です」

多華子「ああ、貴方が耕一さんの奥様なのね...」

麗華「夫をご存知ですか...」

多華子「一度、クルマの番組の収録で、お会いしました」と言い、会釈をして、先へ行った。

耕一はその背後にいて、多華子と顔を合わせるのを避けた。

やがて来賓の内覧会も終わり、控え室へ移るとき、多華子は麗華と耕一が立ち話をしているのを、見ると彼らに近寄った。

多華子「あら、耕一さん。こんにちは。素晴らしい美術館ですね」

驚く耕一と麗華。

耕一「ええ、ありがとうございます。今日はお忙しい中ありがとうございます...」

多華子「いえいえ、耕一さんの会社の美術館ですから... 奥さん、素敵な方ね、...」

麗華...多華子の話がどうも引っ掛かる。
少し探りを入れることにいた。

麗華「土岐さん、お車がお好きなんですって、今度ウチのコレクションを見に来ませんか。お気に入られるかも知れませんよ...」

多華子「あら、嬉しいわ...後で、連絡してください...楽しみだわ.」

麗華「ねー、貴方...」

耕一、話の意外な流れに驚きながらも、和やかに、だが表情は何処と無く強張っている。

耕一「ええ、是非いらっしゃてください。戦後幸田商会は一時シトロエンの日本代理店もしていたので、2CVやDS19もありますから...」

多華子「そうなの、じゃー是非...」と言いつつ、爽やかな笑顔を残して控え室へ行く。

麗華、怪訝な顔をして耕一を見つつ、
麗華「貴方、彼女を知っていたの...」

耕一「だから、言ったじゃない、TV番組の収録で会ったと…」無気になり言う。

麗華、その言い方も気に入らない。
何か不自然なものを感じる。

麗華「そのうち、彼女を内に呼んだら…」といい、エレベーターホールへ向かう。

耕一はひとり取り残されて、戸惑う。

この時、麗華はあの女優が夫の新しい愛人では無いかと、いう疑いを持った...確信は無いが...まだ。

それが、2008年5月の出来事だった。

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