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映画「あのこと」と性教育

TBSラジオ「荻上チキ Session」Podcastを聴いていて、紹介されていた映画に少し興味をもちWebで調べてみたものの、どうも富山ではやっていなかったようで、そのまま忘れていました。その後とある予定がなくなり何気なく見たら、その映画が富山でも公開されているのに驚き、よい機会だからと行ってきました。どうやら(地方だから?)二週間ほど公開が遅れたようです。それが映画「あのこと」です。 

映画「あのこと」の一シーン(1)

憤り

映画「あのこと」は、まだ中絶が違法だったフランスで、望まない妊娠をして苦悩するある女性の12週間を描いたものでした。
その女性からの視点で描かれていたためか、私は40歳代の男性ですが、なぜ女性ばかり苦しまなくてはいけないのかと憤りを覚えた、というのが第一印象です。観てから数時間は眉間に皺を寄せている気がしました。
映画に出てくる男性はみな無責任で腹が立ったのですが、改めて考えると私自身そんなに変わらない(つまり無責任だ)し、映画は「過去のフランス」という設定ですが今の日本もそう変わらないなと思いました。幸い(?)このままいくと自分が妊娠に直面することはなさそうですが。

未婚女性の妊娠への差別

「なぜ女性ばかりが」と書きましたが、改めて考えると「女性ばかり」というのは違うかもしれない、と思いました。映画で主人公が女子寮で他の女性から責められるシーンがあったのですが、そのシーンから女性同士でも、いや女性同士だからこそ未婚女性の妊娠に対する差別があるように思えたからです。女性として普通の生活を送っているのに、妊娠しているとわかった途端に周囲の態度が変わる。未婚の妊娠が違法だったからなおさらかもしれませんが、今も未婚で妊娠した女性とは関わるのを避け毛嫌いするようになってくるのは、そう変わっていないのではないでしょうか。
主人公が妊娠について深刻に悩んでいるのに対し、他の女性が男とキャッキャといちゃついているシーンもありました。その女性は主人公の状況を知らなかったものの、男性との付き合いが楽しくて仕方がない高揚感に対し妊娠してしまった絶望感とのギャップがあまりにも大きく描かれているように思え、未婚女性の妊娠への残酷さを感じました。

改善すべき性教育

「荻上チキ Session」Podcastでは監督にもインタビューしていて、「男性とはこうなんだということではなく、時代の背景として、男性は女性の妊娠について知らないし、知らなくてよいし、女性も男性にあまり知られないようにするのが社会の決まりだった」と言っていました。ですが、「男性は女性の妊娠について知らないし、知らなくてよいし、女性も男性にあまり知られないようにしている」のは、今の日本もそう変わらないように思います。
私が学校で性教育の授業を受けたのはもう30年以上も前ですが、今も座学形式で行われているとすれば、男性(男子)はもちろん女性(女子)も自分事とは思えず話半分にしか聞いていない気がします。さらに入試が関わってくれば、なおさら受験とは関係ない科目だからと関心が薄れるのではないでしょうか。ちなみに私自身は中高生の頃気恥ずかしさもあって授業中耳を塞いでいたのを後悔しています。
番組では話が性教育の重要性に展開していきましたが、ゲスト出演の産婦人科医・遠見才希子氏は、「性教育は「望まない妊娠をしてはいけない」など説教のイメージがある」とし、「しかし性教育は本来、一人一人が主体的に考えて自分や他人の権利を大切にしながら性的自己決定力を育んで健康と幸せに繋げるというもの」だと言っていました。なるほど、と思います。
私は男女が異なる内容を教えるのはおかしいと思うので、男女別に行うこともどうかと思いますが(今は一緒にやっているのかな?)、それはおいたとしても、性教育は参加型学習で行うべきではないかと思っています。例えばロールプレイ式とか。

中絶の権利

荻上チキ氏は番組で「日本では現在も中絶をする際には男性の同意が必要とされ、男女平等とは言えない状況にある」と言っていましたが、それなら男性が認知するのも義務化すべきではと思います。同意必要なら相手は絞られているわけですし。
もちろん「男性の同意不必要」の形にするのが望ましいと思いますが、そもそも男性が中絶を同意してくれないケース=出産を強いるケースは男女間の軋轢を生むだろうし、産まれてくる子どもにとっても不幸になりかねないように思うのですが、どうなのでしょう。
 
女性にとっては日常なのに、今もひた隠しにしなくてはいけない悲惨な現状を観たような、そんな映画でした。
評価は「3:まぁよかった」かな。(基準・・・5:大絶賛! 4:もう一度観たい 3:まぁよかった 2:よくなかった 1:二度と観ない)
 
【参考】
映画「あのこと」公式サイト
https://gaga.ne.jp/anokoto/

映画「あのこと」の一シーン(2)

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