アフリカと中国の関係をあらためて考えてみたい その(1)中国の影響力は?
2023年12月中旬、急な寒波が襲ってきた中国・北京。もう17年も前の記憶なのですが、中国にきて3年目の私の頭にある、あの景色が離れません。
それは2006年の初冬、前職のプロジェクトで、北京の中心地・王府井を歩いていた時に、通りの真ん中に、たくさんのカラフルな国旗が展示されている風景です。ほぼ全ての旗が初めて見る旗。これ、いったい何が起きているのか?と、ゆっくり眺めた記憶を思い出しました。「Forum on China-Africa Cooperation」という英語も。「中国・アフリカ協力会議」という意味なのかな?とぼんやり考え、「アフリカか~。中国と仲が良いのね~?」と無邪気に笑っていました。当時の私は、中国のことで手一杯。アフリカに思いを馳せる余裕もなく、アフリカで知っている国も、非常に少なかったので、そのカラフルさだけが印象に残っていました。
あれから、18年。自らがアフリカと中国の近さを、ビジネスを通して強く感じるようになるとは予想もしておりませんでした。さらに、この 「Forum on China-Africa Cooperation」、2023年10月に、第九回目が北京で行われたニュースを見て、あらためて、中国とアフリカの関係を確認したいと強く思うようになりました。将来、さらに強い関係性を維持していく可能性のある「中国とアフリカの関係」、そして、今年はそこに我々日本企業がどのようにかかわっていくべきなのか?を考える一年としたく、筆をとりました。
Forum on China-Africa Cooperationウェブサイト
Forum on China-Africa Cooperation (focac.org.cn)
過去9回行われた「Forum on China-Africa Cooperation」
●ポイント
※日本が主催するTICADよりも後に開始したが、既に、開催回数でTICADを超えている
※2006年から「安全」という言葉が追加されている
中国がアフリカとの関係を非常に重視していることは、ビジネス世界では既に広く知られていると思っています。「グローバル・サウス」という言葉が頻繁に使われるようになった現在はもとより、数年前から「債務の罠」という表現で中国を非難する国際世論もでてきており、多くの方が中国はアフリカ諸国との関係を政治的に利用しようとしているという、ぼんやりとしたイメージを持っていることでしょう。この見方は一面を表現していますが、一方、中国の貢献で実際にアフリカ諸国・国民が豊かな生活ができるようになってきているのも、また真実でしょう。良いか悪いかではなく、この関係は、日本企業である我々に、これからのアフリカとの関係を考えるにあたり、多くの示唆を与えることになると考え、24年1年間をつかい、複数回をいただき、「アフリカと中国の関係をあらためて考えたい」と思います。そして、最終回では、「日本企業は、この中国とアフリカの関係に対して、どのようなスタンスでいるべきなのか?組むのか?競うのか?避けるのか?などの示唆に辿り着きたいと思います。
両者の貿易額推移(2003年~2022年までの輸出入額)
●ポイント
※2015年が大きな変化点。中国からの輸出額が、アフリカからの輸入額を大きく上回りだした
それでは、まずは、両者の貿易面の関係から見ていきましょう。2022年で、中国からの輸出が約1,600億USD、輸入が約1,200億USD。中国の輸出超過状態です。中国の輸入額は、2013年をピークに減少に転じ、その後回復したもの2022年でも2013年水準のままです。
圧倒的に中国が儲けている状況に見えますね。実際にそうなのだと言えそうです。
中国からのTOP10輸出国とTOP10輸入国(対アフリカ)
●ポイント
※中国からの輸出相手国は、人口が多く、相対的に経済が発展しているアフリカの主要国。中国の輸入国相手国は、資源国
輸出入の商品種別を見ると、さらに明確になります。付加価値をつけた分だけ、中国側が儲かるに状態になるに決まっていますよね。ただ、大きなポイントは、中国企業の手頃な/手に入れやすい?製品が、アフリカで選択されている、という事実なのです。アフリカ人が購入できる製品・商品を提供できているのです。(この点は、将来深堀りしたいと考えております)
中国からのTOP5輸出入商品種類(対アフリカ)
●ポイント
※工業製品を輸出し、原材料を調達する、という非常にわかりやすい構造
次に、「債務の罠」で有名になった、中国からアフリカへの投資について見ましょう。これも既に有名なのですが、2018年をピークに、22年まで、投資額は減少してきました(ただし、23年は増加に転じるとの予測もあります)。それでも、累計で400億USD前後を投資してきています。減少の理由は、中国自身の経済的な問題や、コロナ禍が影響している可能性が高く、今後もウォッチしていきたいところです。
投資業界は、「建設業」「採掘業」「製造業」「金融業」が上位4業界です。これもわかりやすいですね。インフラ建設と鉱山開発がメインです。一方、製造業も着実に投資を続けている点は注目したいところです。
中国からの直接投資推移と業界TOP5(対アフリカ)
貿易・投資が増えることで、当然ですが、アフリカに進出している企業も、3,300社を超えています。2019年約3,800社をピークに、減少傾向にはありますが、それでも、中国の海外進出企業の7%をアフリカ進出企業が占めています。また、中国・アフリカ双方で、それぞれ年間46万人が旅行をしているのです。アフリカにいる日本人が、「ニーハオ」と挨拶されるのも当然ですね。
中国企業のアフリカ進出状況
それでは、最後に、中国がアフリカに残しているものを見ていきましょう。インフラ、企業など、多くの足跡を見ることができます。得意のインフラは、鉄道、道路、港湾、鉱山、通信と、幅広くカバーしており、さらに製造業でも着実に、アフリカ社会に貢献しているのです。ここでは、その一部をご紹介します。
インフラ開発事例・企業例の一部
【鉄道】
【道路】
【海港】
【自然資源・採鉱権】
通信インフラ建設(HUAWEI)
建材&重機(SANY)
携帯電話(Transsion)
中国とアフリカの関係を深堀りし、将来の示唆をえるため、初回ということで、幅広くファクトを押さえてきましたが、次回からは、個別の案件・事例を深堀していきたいと思います。そして、最終的には、日本企業にとっての有益な示唆を導き出せるようにしたいと思っております。ご期待ください。
執筆:AAICパートナー(上海駐在)田中秀哉
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