「アフリカにドバイを造る」という壮大な計画 椿 進
アフリカの大型プロジェクト一覧(一部、2020年調査時点、「超加速経済アフリカ」)より)
今、アフリカ各地で、大きな開発が次々に計画され、一部は実行されています。その筆頭格といえるのがラゴスの「Eko Atlantic」。ナイジェリアの大財閥グループ「Chagoury」グループによる「アフリカにドバイを造る」プロジェクトです。
約2000億円をかけて、1000万㎡の埋立地を作り、千代田区と同じ広さの土地を創出。そこに住宅の他、ホテル・商業施設・オフィス棟を兼ね備えた街を作り出します。住宅は25万人が居住できる規模の施設も建設予定です。
何よりの注目は、この1000万㎡の埋立地が、東京でいえば、大手町や銀座のすぐ隣に作られた、ということです。ナイジェリアの首都ラゴス、2000万人大都市の中心地のすぐ近く、最高級エリアに隣接して創出された埋立地なのです。
遠浅で埋め立てに絶好の場所が、都市部のすぐそばにあった、ということ。東京も江戸時代に、東京湾を埋め立てて築地など拡大していったのですが、それを今、ラゴスがやっているのです。
西アフリカは先にも書きましたが、ナイジェリアを中心に5、6億人が暮らすアフリカで最もポテンシャルのある地域のひとつ。しかし、ビジネスとしての核となる場所・都市がありませんでした。それを埋立地によって創出しようとしているのです。
フリーゾーン指定地区なので、基本無税、無関税です。ゲートシティで治安を担保し、専用の発電所を完備します。ラゴス名物の雨季での道路冠水も、大規模な排水設備により対応しています。
約12年かけて第1期の埋め立ては完了しています。その技術を提供したのは、デンマークの企業。1000年に一度の20m級の津波が来ても大丈夫、という触れ込みです。大変残念なことに、日本企業は全く関わりを持っていないようです。
民間のChagouryグループが中心となり、ナイジェリア政府、ラゴス州、ヨーロッパ企業、さらにはレバノン政府が支援して推進しているようです。Chagouryグループは創業者一族がレバノン人です。西アフリカはフランスとの関係が強く、同じフランス植民地だったレバノンと深くつながっていることも背景にあります。
ファイナンスでは、BNPパリバやアクセスバンク、ファーストバンクなどの、フランスやナイジェリアの大手銀行が参画しています。あくまで民間の財閥グループによるプロジェクトです。
プロジェクトの式典には世界のVIPが招かれていました。グループの総帥やナイジェリア大統領はもちろん、ビル・クリントン元米国大統領の姿もありました。
埋め立てに10年以上かかりましたが、今後は10年ほどかけて、建築物も増えていくと思われます。
間違いなく西アフリカの一大拠点になる。せっかくアフリカにも拠点を置いていますので、私たちも参画できないか検討しています。10~20年と経てば、西アフリカのドバイになる可能性は高いと思っています。
(2021年12月2日更新)
文章:AAIC 代表パートナー 椿 進
Asia Africa Investment and Consulting(AAIC)代表パートナーを務めるアジア・アフリカビジネスのスペシャリスト。東京大学教養学部卒業。ボストン コンサルティング グループ(BCG)のパートナー・マネージングダイレクターとして、事業戦略、M&A戦略のプロジェクトを実施。2008年に現AAICを創業し、代表パートナーに就任。中国・東南アジア・インド・中東・アフリカ等で、新規事業育成、市場参入支援等をコンサルティングと投資を通じて実施。日本初のアフリカ・ファンドも運用。ルワンダではマカデミアナッツ農園も手がけている。執筆、講演多数。ビジネス・ブレークスルー(BBT)大学大学院教授として後進の育成にも力を注いでいる。
現地情報×ファクトフルネスで今のアフリカを解説した著書『超加速経済アフリカ: LEAPFROGで変わる未来のビジネス地図』はAmazonビジネス書ベストセラー、発売たちまち5刷になるなど話題を呼んでいる。
東洋経済オンラインでもアフリカに関する記事を好評連載中。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?