せっちゃん
また幼少期の話になるが、うちのデリカでは、
両親の好みでいつも、斉藤和義がかかっていた。
両親はいつも斉藤和義をせっちゃんと呼んでいた。
私も妹も、それに倣ってせっちゃんと呼んでいた。
ふと疑問に思い、聞いてみる。小学生の頃だ。
「何でさいとうかずよしをせっちゃんって呼ぶん?」
「せっちゃんは石鹸が好きやねん」
「へぇ〜」
石鹸の「せ」でせっちゃん。
なるほど。
年月は流れ、車はデリカからレガシィになった。
小学生だった私も中学生の終盤に差し掛かっていた。
ふと疑問に思い、聞いてみる。どうしても変だ。
「せっちゃんって、石鹸が好きやからせっちゃんってあだ名なんよな?」
「いや、セックスが好きやからやで」
「へぇ〜」
その言葉の意味、親が昔嘘をついた意味、親が今嘘をつかなかった意味、斉藤和義の不思議な色気のワケ、全てが理解出来る自分の成長、良くも悪くもない、何とも言えない気持ちで溢れたことだけ覚えている。
すっかり成人してアラサーになろうとしている今、
私はせっちゃんが大好きだ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?