『又左の首取り』ー前田利家ー(『戦国の教科書』2限目 より)
タイトルだけみれば、ビギナー向けなのかな、と思える1冊
ところが、見事に騙された(笑)
玄人をも唸らせる短編が収録された、ガッツリクオリティなアンソロジー本
それが『戦国の教科書』
そのテーマについて書かれた短編集に始まり、テーマ解説があり、テーマを学べる他の本紹介(ブックレビュー)という構成。
日本史(歴史小説)初心者が入るにはやや難しいかもしれないが、元々日本史は飛び込んだらやみつきになるもの。
その魅力を存分に感じ取れるはずだ。
ブログでは、本全体と各短編についての感想記事を更新。
ただ、短編ごとについての感想をもう少し書きたいなあ、という思いがあり、それについてはこの記事を含め、noteで書いていきます。
■2時限目は合戦の作法
収録作品は『又左の首取り』(木下昌輝)
功名をたて、実力でこの世を渡る。
ドラマやゲーム、マンガや文学(歴史小説)を通じて、戦国武将に私たちが抱いているイメージ。
多少の差こそあれ、上記のような姿、で外れてはいないだろう。
腕力、技術、智謀、機略
人間が持つスキルをフル活用して、命を燃やし尽くすエピソードに、私たちはあこがれやカッコ良さを見る。
しかし、殺し合いの世だからこそ、必要な「礼」があった。
殺す相手だから、と相手を見ないということをせず、相手を尊重し、相手の存在を認め、その死まで受け入れて次へ進む。
その刃に詰まった思いを、ただ破壊のためだけに使わない。
そこにあるのが「礼」
「礼」があるから、人は獣ではなく、人でいられる。
後に加賀100万石の藩祖となる前田利家。
自分の力のみを頼みにし、自分が最強と疑わず、強い相手と闘うことに飢えていた若き武闘派。
腕っ節一つで全てが解決すると思っていた彼がみた、力だけではない強さ
当たり前だと思っていたものが崩れたとき、人は迷い、行き先を見失い、彷徨う。
「礼」のある敵を前にして、利家(劇中では犬千代)はどう対峙するのか。
イメージで作ってしまっていた“戦国武将”を見直すきっかけになる一作。
心の“豊かさ”にも通じるエピソードだ。
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