『一時の主』ー黒田如水ー(『戦国の教科書』1限目 より)
タイトルだけみれば、ビギナー向けなのかな、と思える1冊
ところが、見事に騙された(笑)
玄人をも唸らせる短編が収録された、ガッツリクオリティなアンソロジー本
それが『戦国の教科書』
そのテーマについて書かれた短編集に始まり、テーマ解説があり、テーマを学べる他の本紹介(ブックレビュー)という構成。
日本史(歴史小説)初心者が入るにはやや難しいかもしれないが、飛び込んだらやみつきになる魅力を存分に感じ取れるはず。
ブログでは、本全体と各短編についての感想記事を更新。
ただ、短編ごとについての感想をもう少し書きたいなあ、という思いがあり、それについてはこの記事を含め、noteで書いていきます。
■1限目:下克上・軍師
収録作品は『一時の主』(矢野隆)
戦国時代と言えば、下克上。
下の立場の者が上の立場の者を排し、その立場や財産(この場合は領土や家臣)を奪取すること。
位や体裁ではなく、実力本位という風潮を象徴する言葉だ。
もっとも(厳密に言うと)“下克上”といっても、戦国時代初期と末期とでは微妙に意味合いが違うが、内包するものは変わらない。
力(才覚)で世界を変えられること。
これこそが、戦国時代を生み、多くの英雄達がしのぎをけずった要因。
その時代が100年続いた。
後世から見れば、その終焉は“統一”とわかっているが、そんな風に思えなかった人は相当数いたはず。
まだチャンスはある。
世界を変える機会がなくなってたまるか。
関ヶ原合戦時の黒田如水(官兵衛)は、そんな心境だったのだろうか。
最近の研究では、天下取りではなく、領土拡張が目的だったと言われているが、家康と三成の戦いの場から離れた九州で、一旗あげて第三勢力たらんとしていた、という話しも根強い。
本作では、“統一による終焉”を認めない如水と、“統一による終焉”に己の才覚を賭けた息子・長政の行動が交錯し、天下を大きく揺るがしていく。
求められたのは、混迷か、それとも泰平か。
如水を通して下克上の終わりを描く一作、1限目からこれはなかなかハードだな(笑)
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