「きみ」が変わる物語
『きみを死なせないための物語』
宇宙に浮かぶ都市文明「コクーン」。 国連大学の学生であるアラタ、ターラ、シーザー、ルイの幼なじみ四人組は、 宇宙時代に適応した新人類“ネオテニイ"のこどもたちだった。 ある日、彼らは歓楽街の路地で、緑の髪の少女に出会う。
物悲しいSFです。
瑠璃色って感情で表したら、こういう気持ちなんだろうな、って読後感。
地球に住めなくなった人類、そのなかで生まれた新人類の男女3人。
老化が遅く、長寿な彼ら。
それぞれ特異な才能をもつ彼ら。
「コクーン」では、特別な存在として
市民からの絶大な人気と注目と共に生きています。
「コクーン」で、人の寿命は機関によって定められています。
人それぞれ、その価値を指標で表現され。
「尊厳死」という名のもとで、
その指標をもとに、いつが死ぬ時か
決められるのでした。
この世界で「オールドマン」とは
有能な科学者を意味します。
長生きするためには優秀で人類に価値があると判断されなければならないからです。
したがって、人類の発展に貢献しうる優秀な科学者は長生きしやすい。
だから、オールドマンは優秀な科学者を意味するのです。
「オールドマン」の言葉の意味が変わるくらいには
当たり前のこととして社会はこの制度を受け入れています。
「コクーン」の設定は
どこか見たことある安心感がありつつも、
細部のこだわりから新鮮さも感じられます。
「コクーン」の歴史を知りたくなる。
なんでこんなルールになっているの、なんで人々はそれを受け入れているの。
でも説明は小出しで、3巻まで読んで全容がつかめてくる焦らし具合。
あ!
私の推しポイントはそこではありません。
この世界の不条理は、必要条件であって魅力そのものではありません。
1番の魅力は、
巻末にたどり着くたび
「きみを死なせないための物語」の「きみ」がうつりかわることです。
「きみ」が死んで、次に出会った「きみ」に「きみ」を重ねて。
新人類の3人は特別で
この世界の不条理から守られた存在です。
ただ、この人たちの周りの「きみ」は
この世界の不条理に組み敷かれています。
安全圏にいる人間は
愛のために世界を変えるのでしょうか。
変えてほしいなぁ。
そんなことを思いました。
瑠璃色が好きな方におすすめしたいまんがです。
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