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【2020年10月20日(火)】モーニングzoomとドラえもんノスタルジア


1. 東京、からりと晴れる。うろこ雲がぷかぷか浮かぶ、気持ちのいい一日だった。

2. 今日は叔母の葬式の日。コロナ渦の葬式は都内に住む身内だけで行い、わたしは葬式に参加できない地方に住む両親の為に、LINEビデオ通話での中継を担当した。
3. 冠婚葬祭をリモートで見る、というのはどうなのか、と以前まではあまりよくは思ってなかったけど、コロナの影響の中、体験してみると、なかなか良かった。
4. 遠くに住んでいるひとや身体の自由がきかないひとにとっては、中継し、自宅から参列気分を味わわえるのはいいと思う。
5. 両親からも、いいアイディアをありがとう、と言われた。調べてみたら、いま、YouTubeライブやzoomなどを使っての葬儀中継はわりとあるらしい。値段は5万円からっていうところもあって、それは高すぎだと思った。
6. 知り合いなら、わたし、いくらでもタダで中継してあげられるのにな。仕事でも、リモート中継をしているから、かなりスキルは習得できていると思う。


7. 叔母は先週の朝方に「なんか駄目かも」と言って玄関に座り込み意識を失い、そのまま眠るように亡くなったそうだ。「2、3日前に、お経がうまく読めるようになったって自慢していたのは、虫の知らせだったかもね」と祖父は話していた。小川洋子さんの言うところの「物語」がうまれ始めていた。
8. もうひとりの叔母は、いつも悪口を言い、喧嘩ばかりしていたくせに、いちばん泣いてしょげていて「妹思いのいい姉だった。子どもの頃、よくおんぶしてくれた」「誰からも好かれるいいひとだった」だなんて、亡くなった叔母が聞いたら笑ってしまうくらいの褒めの布団と、なぜか近年より幼少期のはなしばかりしていた。
9. わたしは、聞き逃さないように、こっそりiPhoneのボイスメモで録音した。おばを偲ぶはなしは、おばの人生の歴史であり、わがやの家族史のピースを埋める「語り」だ。大切な思い出話を聞きこぼさないよう耳を傾けた。


10. 真言宗?のお葬式だったので、うちの臨済宗様式とはかなり違った。まず、お坊さんの持ち物が密教仏教ぽい。すごく声のいいお坊さんだったけれど、途中でわたしも聞き取れる口語体の謡曲みたいなお経になったり、メロディーも転調したり上がったり下がったりのいい調子の節が、なんだかツボにはまり、それまでボロボロ泣いていたのに、不謹慎にも笑ってしまいそうになり困った。マスクしていて本当によかった。

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11. わたしがかなり若い頃、ワタリウム美術館でチベット僧による砂曼陀羅のイベントがあり、最後、その砂を少しだけ頂いた。その砂を亡くなったひとの頭と足元にかけると成仏できる、とチベットのお坊さんから聞き、わたしが死んだときに入れてもらおうとフィルムケースに入れてずっと保存していた。
12. 今回、そのことを思い出し、叔母のお棺の中にこっそりと曼陀羅の砂を入れてみた。「ありがとう、またね」って言って。これはわたしだけの秘密のミッション。隣では、叔父がお棺の中にヨレヨレの豹柄のカットソーを入れていた。それでいいんだろうか、それがお気に入りだったんだろうか、ねぇ、叔母さん、と言いたくなる。


13. 葬儀中は、なんだかお芝居みたいな気がしていた。死顔を見ても、今にも笑って起き出してきそうで。死んだのを認めたくない、というよりも目で見ても喪失の実感がわかない。言い換えると、死んでも存在感は消えないんだ。それはそれで、きっとそのままでいいんだ、と思う。存在感とは、目の前に存在しなくとも成立する。


14. 平日でも火葬場は何組も待つひとたちがいた。そんな中で、喪服を着ずにカラフルでカジュアルな服を着た小学生から二十歳ぐらいまでの子どもたちの集団がいて目立っていた。遺影を持つ子どもは、金髪頭でグレーのスウェットの上下を着ており、うつむいていた。どういった事情があるのだろう。気になってしまう。
15. 袖振り合うも他生の縁。人との縁はすべて単なる偶然ではなく、深い因縁によって起こるもの、という仏教的な考えのように、同じ日に大切なひとを荼毘に伏し、見送るわたしたちは、前世ではみな家族だったかも知れない。なんて思い、心の中で、ほかの慰霊にも手を合わせた。


16. 帰りに短パンをはいたおじさんがカメラを首からぶらさげて駅の踏切をうろうろしていた。「撮り鉄」みたいだった。なんか珍しい電車が来るのかな、と思ったらドラえもんラッピング電車が登場。

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17. 小さい頃、叔母にドラえもんの漫画を買ってもらったことあったな、とまたしても涙がじわじわ出た。わたしは可愛がってもらった。子どもの頃、夏休みに遊びに行くとよく豊島園にも連れて行ってくれた。ありがとう、ありがとう。


18. 帰りに、トイレで着替えて、伊勢丹のマルシェに出店されているベルクに行こうと思っていたけれど、着替えを入れ忘れていた為、そのまま帰宅した。なんかいつも抜けてるんだ、わたし。


19. 家に着いて、塩をふりかけ着替えたら、久しぶりに黒いハイヒールをはき、キツキツの喪服を着て息をしていたので、マラソン後のような疲労感でしばし、爆睡してしまった。


20. さ、目覚めた。いまから特別にサンマルクへ行き、チョコレートパフェを食べようかと思う。今日という日に、あの日、豊島園で食べたチョコレートパフェを思い出して。味覚タイムマシンだ。

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21. シャランララ、夢を叶えてドラえもん!   とっぴんぱらりのぷぅ。♪https://youtu.be/K47FXrqabzA

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