見出し画像

〔掌編小説〕蜘蛛の糸



 エスカレーターに乗っている様は、外側から見るとあまりに滑稽だ。緩やかに運ばれていく人間、何の抵抗もなく、流れるように。海外のホラー映画にはよく食肉化工場が出てくるイメージだが、あれによく似ている。肉の塊が運ばれていく。途中で肉塊を取るクレーンのようなものとか、そんなのも出てきたりするよな。くす、と自分の笑い声が聞こえた。
 目の前のエスカレーターで1人のおじさんが運ばれ始めた。周辺に人はまばらで、エスカレーターに乗っているのはおじさんだけだった。ぼうっと見つめていると、上からクレーンが降りてきて、おじさんを捕まえて持っていった。今日は階段を使うと決めた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?