〔掌編小説〕あなただけ
今までミルワームを見たことがなかった。こんな見た目をしているんだな。崩れ落ちて瓦礫の山となったペットショップから、乾燥させたミルワームを拝借して寄ってたかってくる鳥たちに餌として準備してみた。初めは興味を示したものの、どうも食いつきが悪い。ミミズとかウジ虫を食べるなら好きかと思ったんだけど、やっぱり別物のようだ。パン屑とかの方が良いのかな。そんな高級なもの、もう手に入らないけど。
これ以上、食べられる場所を増やすわけにはいかない。何としてでも、あなたの遺体だけは自分が守らなけば。
了