『文明と呼吸』リファレンス
ボカコレ2023春、たくさん素敵な楽曲に出会えてさいこうなお祭りでした。今回のボカコレ期間は個人的に時間の余裕があったこともあり500曲くらいは聴けたかなと思います、ここにすきを貼っておきます。
作り手側としては『文明と呼吸』という楽曲で参加していました。
たくさんの人に聴いていただいて、コメントや感想のツイートもいただいて、とてもとてもうれしいです。
(ルーキーランキング82位もうれしいです、ありがとうございますm)
このnoteでは、今回この楽曲をつくるにあたって影響を受けた作品の一部を並べてみています。
[歌詞] 二重螺旋にメモをして
「二重螺旋」というのは言わずもがなDNAを指しています。
自分が体験したこと感じたことの記憶を、未来(それも数十年数百年ではなくもっと先の未来)に伝えたい、かつそれは単なる情報としてではなく本当に大切なこととして伝えたいとなったとき、最も信じることができる記録媒体として自身のDNAを選び用いることを描いています。
この「DNAを記録媒体として捉える」という視点は、やくしまるえつこさんのプロジェクト『わたしは人類』、芸術家清水陽子さんの作品『To Space, From Earth』の影響を強く受けています。
『わたしは人類』は人類が滅亡したあとに伝わる音楽(自己複製の過程で変異することや、想定しない読み取り方をされることも許容して)として独自に暗号化した楽曲を実際に微生物の遺伝子を組み替えることで記録するプロジェクト、『To Space, From Earth』は宇宙に向けてメッセージを伝えるために作品を変換してDNAに組み込みメッセージボトルのように実際に宇宙に飛ばす取り組みです。
どちらもDNAを、情報の記録復号や修復ができ、しかもすでに何億年スケールで情報を保存してきた実績のある優秀な記録媒体と捉えており、それぞれの作品に出会った当時その視点に衝撃を受けました。
[曲構成] 拍子が1ずつ減っていく
拍子を八分で数えると、曲が展開するにつれて8→7→6→5→...と減っていき、それに伴いイントロからずっと途切れず繰り返すピアノフレーズの音も少なくなっていって最終的に無くなってしまう、という作りになっています。
この「拍子が1ずつ減っていく」という曲構成は、スプラトゥーン3のBGM『運鈍根(Chaos Carnival)』から着想を得ています。
一般的に曲の拍子を決める際は、その拍子から受ける印象や生まれるノリが楽曲の雰囲気に合うものを選ぶケースが多いのかなと思います。ですが『運鈍根』は1小節ごとに拍子が1ずつ増えていくように作られており、 “拍子の数字そのもの” にある種数学的に直接的な意味を持たせている、という点におもしろさを感じました。
そこから着想して、今回の楽曲では「拍子の数字自体に人生の残量という意味を持たせ、それが1ずつ減っていく」というコンセプトを主軸に置いて構成しました。
※『運鈍根』の楽曲はまだリリースされていないのか見つからなかったのでリンク貼れずです、すみませんm
ちなみに完全に余談ですが、前作『悪の権利』は9拍子→3拍子→4拍子という展開なのですが、9→3の部分が3の倍数どうしでおもしろく接続できるのではないかという発想で作りはじめていて、これも拍子の数字自体に注目して構成しています。
ただ、結果的には5+4的な9拍子で作っていたため割と雰囲気はガラっと変わる接続になり、それはそれで気に入ったのでそのままGOとしました。
余談失礼しました、運鈍根の代わりにこちらを貼らせてください。
[歌詞] 雨粒を飾った一筋の透明な線が眩しくて
この一文は、水滴がついた蜘蛛の糸が光を反射してきらめく雨上がりの様子を書いています。
これ自体は自分の日常の経験に基づくものではあるのですが、そのシーンを用いて自然の美しさ尊さを切り取るという着想は、haruka nakamuraさんの楽曲『カナタ』の川内倫子さん制作MVからです。
該当箇所は5:10〜の、風に靡くたった1本の蜘蛛の糸で空気の動きや光を表現するカット。映像から連想的に温度感までもが伝わってきそうなくらいです、透き通った声も相まって泣いてしまう。
[トラック] 0:32〜パートのスネア位置
かなり細かい部分ですが、歌詞で言う「天気広報」と「繰り返す感情」あたりの4拍目のスネアを素直に表に置けばいいところ裏に置いています。
これは『Sing It Loud』という楽曲で2小節おきに4拍目だけスネアを裏にずらすリズムパターンのエッセンスを拝借しています。裏に置いたスネアの小さな裏切りが一瞬耳の注意を向けさせる働きをしていて癖になる心地よさがあるリズムを生むなと感じます。
[トラック] ドラムのローパス
曲中でところどころドラムにローパスをかけてこもらせた音にしています。
具体的にはイントロ前半、0:30の可不→裏命受け渡しや0:50の7拍子への切り替えといった曲の転換点です。
こもった音からクリアな音に戻る瞬間が強調されるので、インパクトを強めたい箇所に入れ込んでいます。
この技法はおそらくいろいろな曲で使われているのかなと思いますが、印象深い楽曲は『ゴールデンタイムラバー』です。Aメロが2回繰り返されるのですが、2まわし目に入る直前のフィルインから一気にクリアな音に切り替わってノリが高まるのがすごくクールです。ちなみにハガレンは漫画で読みました。
おわりに
明確なリファレンスとして自分で認識しているのはこれくらいです。
ただ、特にトラックに関して言えば自分はそもそも音楽を学んだ経験がなく、たくさんの音楽を聴いて観察して “自分がグッとくる音楽の要素” を集めて煮詰めて、それを材料にあーでもないこーでもないと実験しながら納得のいく作品の形に仕上げていっているだけです。
必ずしもすべての音楽が自分の好みとは限らないですが、それらによっても自分の好みの要素の解像度は高まると思っているので、潜在的にはすべての曲がリファレンスみたいなものかもしれないです。
それに付随して、以前こんなことツイートしたのですがこれどうにかならないですかね、、みんな音楽のメモってどうやっているんだろう、良い方法あれば教えてくださいm
読んでいただきありがとうございました、まとめるの楽しいのでまた次回もやろうかな、おしまい。
あそ
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