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香水

 お上品ぶってみたけれどやはり様になら無い。身の丈に合わないブランド品の化粧品で没個性を振り撒き今日もお化粧をする。Chloeの香水をつけながらスマホを片手に遅刻の言い訳にゆるい絵文字を付け加え送信ボタンを押す。エレベーターの待ち時間、電車のホーム、わたし本当は、高校生の時にドンキホーテで数時間かけて選んだお節介な程に匂いが取れないハート柄のビンのあの香りの方がお気に入りだったなんて事も、目的の場所へ運んでくれる電車が停まれば回想も無かったものにしてせっせと歩く。
 自然さが欠如した愛嬌と心身共の鎮痛剤を常に持ち合わせ、慣れないピンヒールを履き、ツンとした顔で街を歩き、エレベーターで鉢合わせた女の子の隣で呼吸をしてみた。

 あぁ、やっぱりわたし、ドンキホーテで買ったあの香水の方が好きだったんだなぁ。

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