第三章 年収と雇用機会均等法
多感で若い時期に結婚相手と一緒にたくさんの思い出づくりをして、苦労を共にすることは今後の二人の人生において大変有意義な時間となるでしょう。なぜならば、ジャネーの法則として知られるように、人間の時間の体感速度は年を取るにつれて加速していくからです。
何をもって幸せとするかは個人の判断としますが、現実問題として子育てに多大な費用がかかるようになってしまった現在の日本で、結婚というハードルをあげていることには金銭的な不安が絡んでいるように感じます。
国税庁の調査(令和2年9月民間給与実態統計調査 国税庁長官官房企画課 調査結果報告より)では、日本の平均年収は436万円です。
男女別にすると男性 540 万円(前年比1.0%減)、女性 296 万円(同 0.8%増)となっています。
244万円もの差がついており、現在でも女性は男性の半分程度しか年収をもらっていないのです。
日本の会社での給料システムはほとんどの場合、勤続年数に伴って役職がつき賃金が上がる年功序列制です。
年収差は年齢を重ねれば重ねるほど開いていきます。
男性では 60 歳未満までは年齢が高くなるにしたがい平均給与も高くなり、55~59 歳の階層(686 万円)が最も高くなっていますが、女性では年齢による格差はあまり顕著ではないのです。
この年齢層で男女間の平均年収の差は最大となり385万円男性が多く収入を得ています。
結婚・出産などで離職や休職を選ばざるをえない女性は、継続したキャリアを構築しにくく、年功序列で給料が上がっていく男性と同じように出世していけないことが年収増を阻む一つの大きな壁になっていると言えるでしょう。
日本では昔から男性と女性の間に年収の差がありますが、男女雇用機会均等法が生まれて30年経った今もその溝は埋まっていません。
男女雇用機会均等法とは、
第二条 この法律においては、労働者が性別により差別されることなく、また、女性労働者にあつては母性を尊重されつつ、充実した職業生活を営むことができるようにすることをその基本的理念とする。
第五条 事業主は労働者の募集及び採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。
第九条 事業主は、女性労働者が婚姻し、妊娠し、又は出産したことを退職理由として予定する定めをしてはならない。
4 妊娠中の女性労働者及び出産後一年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は、無効とする。ただし、事業主が当該解雇が前項に規定する事由を理由とする解雇でないことを証明したときは、この限りでない。
上記のようなことを定めています。
しかしながら、子育てをしながら仕事を継続するのはとても大変なことなのです。妊娠に10か月、授乳に1年、保育園で熱を出し、小学校では15時にこどもが帰宅する。女性に負担がかかります。その事実が年収の差となって表れています。
未婚者の結婚相手との年齢差についての希望をみると、近年、男女とも年齢の近い相手を希望する割合が増加傾向にあります。
特に、男性では「同い年志向」が増加しており、今回調査では41.8%(前回35.8%)となりました。共働き家庭が多くなり、女性を専業主婦として養うのではなく、人生を収入面も含めてお互いに支えあうパートナーとして女性を選んでいることがわかります。
しかしながら 男女平等度120位(156か国中)という先進国の中でも未だ最下位の日本では(ジュネーブの研究機関、世界経済フォーラム2021年版男女平等度ランキングより)、女性の収入を当てにしたライフプランでは、子育てという状況になったときに非常に厳しい年収の現実があるのです。
妊娠出産という女性にしか担えない役割と、日本における有償労働の在り方は、今でこそ働き方改革が推し進められていますが、まだまだ改善すべき点が多くみられます。
また、男女平等という教育で育ってきた女性には、夫を主人と紹介することに疑問を持つ声もあります。それには、主人という言葉には、家のぬし、あるじ、 他人を従属または隷属させている者という意味があるからです。
しかし対等な意味合いが強い『夫』よりも、配偶者を立てている呼び方だからですが、専業主婦が多かった世代に主に使われているので、時代に即していないと感じています。今はパートナーや夫などと呼ぶ場合が多いのでしょう。
想像してほしいのですが、パートナーである男性が転勤などで自分の職場のそばに引っ越しをしたいとした場合、そして妻である自分の職場は通えなくなる位置になる時、どのような選択を取るでしょうか?
出産や育児を考えて折れるのは妻側という現状がまだまだ多く、合理的とされています。
ライフプランを若いうちに練り、一度辞めても復職が容易い専門職の資格取得を女性は視野に入れてもいいかもしれません。
また、選択肢が多いほど柔軟に人生における困難に立ち向かうことができます。
日本人における『若さ信仰』は新卒一括採用から始まり、さまざまな場面で見て取れます。
これは女性の『婚活』においても顕著に表れるため、早めに婚約者を見定めておいてもよいのではないでしょうか。婚約または結婚していても大学には行けますし、就職もできます。もし妊娠した場合でも社会人として自立している婚約者がいれば悩む必要はないです。
また、近年国内総生産(GDP)に占める公財政教育支出も、OECD(経済協力開発機構)の中では下位に属していた時期もありましたが、保育園や高校無償化などにより世界水準と遜色なくなっております。
子育てにおける家庭からの支出は、塾代や習い事代などにより高額になる家庭もあることから、教育格差として問題になっております。貧困の連鎖を断ち切るためには女性も学歴が必要という調査結果もあります。起業を目指すにも女性には起業支援制度も充実しております。
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