
10.21 『魔法学区』
10.21(月)
今日は絶対に定時で帰らなくてはならなかった。19時から札幌Sound Lab mole で長谷川白紙のFirst tour『魔法学区』があるからだ。定時には帰れたけど、「用事があるので」と伝え上司らに仕事を任せてしまい申し訳なかった。いつも居残りをしているからか、「いいよ、いいよ!帰って帰って」と優しく笑顔で促されたがわたしがいつも残っているのは、単に仕事が遅いだけだったり、家に帰りたくないとかそんな理由なので、自分の仕事ぐらい残ってでもしないといけない。でもこの日はどうしても上司らの優しさに甘えてしまった。
一瞬だけ家に帰り、着替えてメイクを直しすすきのに向かう。道に迷って結局開演とほぼ同時に来場する。

肉迫してくるようなダイナミックなスネアによる「ねんねこころみ」からの「行っちゃった」で一気にわたしの身体は長谷川に所有され、身体が音に蚕食されていく感覚を得る。わたしは長谷川が生み出す音の洪水で泳ぐ、踊ることのみでしか身体は自立できない位相にあるような体感のまま、音、レーザー、モニターの映像と戯れ合う。狂乱というか、造語にしてしまえば享乱という感じだった。
長谷川は、KID FRESINO との共作「行ってしまつた」を公開した際のコメントで以下のように述べていた。
この曲は私の中で常に蠢いていた過去を置き去りにする/未来に置き去りにされる、という私の時間に対する刹那的な摩擦に関するものでしたが、それを完全に汲んでくださったことに感謝しています。走るというモティーフがすきです。それは移動の混乱でありながら最も効率的な移動であるようにも感じるからです(よろしくお願いします)。
約1時間半ほぼノンストップで演奏し続けるセットはその「刹那的な摩擦」をまさに実現させているようで、たしかに長谷川白紙は走り続けているようにみえた。
ライブの途中と公演後コンビニでクラブで知り合った相互の真緒さんに会う。毎回だけど緊張して目もあまり見れなくおどおどして申し訳なかった。何かもっと共有したかったその場の感動があった気がするのに。
適当に見つけたビアで日記を書いたりKindleで本を読んだりしていたら寝ていて終電を逃す。タクシーで帰って洒落にするしかないような金額のお金をを運転手に渡して帰宅する。適当にサラダとか200kcal未満のスナックを食べ眠った。この頃には長谷川白紙のライブでの脳の記憶としての実感は薄れていたけれど、あの時長谷川が生み出す音の鳴りによって襲いかけられた身体はその体感をいつまでも夢のように記憶し続けるだろう。