車窓より~山の雪化粧~
~車窓から見る光景。
雪化粧が美しい。
だが只の山だ。
――それもまた良し。
~
場所は日本。
草薙は地方から中央へ移動していた。
乗り物で移動している。
鈍行である。
特急に比べて安いのだ。
(安いのはいい)
庶民派である。
今は急ぎではない。
ゆっくり移動しても支障はないのだ。
(結構好き)
乗り物から見る景色がちょっとした楽しみだった。
変わる自然風景。
談笑する人々。
過ぎ行く人と自然の営み。
それを見るのが地味に好きだった。
(同じような奴、結構いそう)
それもまた良し。
草薙はふと、遠くを見た。
山麓の景色が目に映る。
(んっ?)
その山に、粉をまぶすように白いものがついていた。
(雪だな)
白い雪だった。
白雪が山頂付近を彩っていた。
(雪化粧だ)
景色が綺麗だと、草薙は思った。
(あの山は……)
――普通の山だな。
特別な山ではないだろうな、と思う。
だが
――それもまた良し
綺麗だった。
特に有名な山でなくとも、ふと見た変哲のない山でも、綺麗なものは綺麗だ。
山が過ぎていく。
少し心地よい。
少しだけ心に残った。
過ぎる山
心彩る
雪化粧
只の山だが
それもまた良し
(……寝るか)
軽くあくびする草薙。
草薙はゆるかった。
まどろみの友を得た草薙は目を閉じた。