只の日本人、卵を食べる
――いただきます。
今日は卵を食べる。
(卵はいい)
卵には栄養がたくさんある。
たんぱく質がたっぷりだ。
一説によると、卵にはいわゆる「若返り」のための栄養が豊富。
若返りのための肌の潤い成分が豊富なのだ。
最も、草薙悠弥という人間にとってそれがどれほど意味があるかは疑問だが。
(卵は栄養がたっぷりだ)
栄養がたっぷりなのは間違いない。
多くの日本人が食べた卵。
多くの日本人の健康を支えてきた卵。
その卵を――食べる。
草薙は卵を手に取った。
お椀の角、卵をコンコンと叩く。
パカン、と小気味いい音をたてて卵が割れた。
卵の黄身が見えた。
食欲をそそるトロリとした黄色。
(うまそうだ)
この卵がおいしいのだ。
お椀に広がる、生卵。
白と黄色。
(ここに醤油をかける)
草薙は醤油を手に取った。
生卵にトクトクと醤油を注ぐ。
黄色と白のトロリ生卵に、美味しそうな黒い醤油が混ざっていく。
(これがうまいんだな)
草薙は箸で卵と醤油を混ぜる。
美味しそうな卵と美味しそうな醤油が混ざっていく。
(うむ)
卵ができた。
醤油を混ぜた卵。
ご飯と食べると実に上手いのだ。
(栄養もたっぷりだ)
草薙は醤油が混ざった卵に口をつけた。
(うむ、いける)
上手い。
ホカホカの白米を食べる。
卵は白米と交互に食うとうまいのだ。
(うまいな)
日本人の多くが食べる卵。
日本人の多くが栄養を支えた卵。
草薙が食べているのは只の卵。
10個200円位のセールで買った卵だ。
普通の卵だ。
だが――
(それもまた良し)
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