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花想文

うずくまる肩にひとひらの
花びらの重さ心地よく
ゆらり舞い 風のままに
ゆらり舞い 落ちたからこそ
昏い夜道に春が届いた

はじめて見上げて一面の
溢れそうなほど満開の
ふわり薫り 風のままに
じわり霞み 落ちたこころの
鼓動をずっと忘れない

知らなかった
驚いた
けれどもずっと、待っていた

知らなかった
はずなのに
ずっとずっと、待っていた

君が咲く 春笑う
君が舞う 風光る
君が落つ 月開く

空を転がす掌を
見つめる瞳に舞い込んだ
柔い手紙のひとひらに
「私は君だけの花」

こんな僕も、愛されるのか

往くな春 あと少し
あと少しだけ 花でいて

君は散っても実を結ぶ
辿り着く先でまた開く

けれど僕らは最初で最後
最後の今を生きているんだよ

名残れ春 好きなだけ
今がたけなわ 打ち靡く

沈まぬ月 色は匂えど
俯く者に春は来ない
春は来ないはずだった
舞い落ちた君の辿り着く先に
一握のぬくもり
春光る

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