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終わりが見えない

終わりが見えない。
ずっとずっと真綿で首を絞められる
…というには些か苦しすぎる日々が続いている。

入社以来、刺すような痛みや泣きじゃくるような苦しさのピークはきっとこのnoteを書いた時だった。

自分が苦しいのは、自分が弱いせいだと思っていた。
仕事がうまくいかないのも、怒られるのも、踏みにじられるのも…
全部自分が悪いんだと思っていた。

ただあれから4ヶ月が経ち、私が仕事をしていてこんなにしんどいのはどうやら私だけのせいではないのだということがわかった。
職場の業務量がかつてないくらい膨れ上がっていた。
10年以上働いている大先輩達が「今が一番しんどい」と零しているのを聞いて、2年目のひよっこが自分の能力だけで何とかできる状況ではなかったのだと気づいた。

もちろん私はもっともっと知識もスキルも身につけなきゃ行けないし、強くも、時に狡猾にもならなきゃいけない。仕事なんだから、私自身がもっと成長しなきゃいけない。

だけど私だけに原因を求めれば良い状況でもなかった。それに気づいた時、ほんの少しだけ私の視界を覆っていた霧が晴れた気がした。

ずっとしんどいのは同じだけど、
涙を目に溜めて出社することも、夜中に目が醒めて泣いたり吐いたりすることもなくなった。

ただ、最近あの頃と近い感覚が戻ってきている。
なんとなくしんどいな…と漠然と思っていたものが実感としてギシギシとのしかかってきている。
そしてあの頃と同じように、またSeventeenさんのとある曲が私の胸にストンと落ちてきた。

끝이 안보여(Space)

끝이 안보여。翻訳すると「終わりが見えない」。
初めて聞いた時、なんて苦しい歌だろうかと思った。苦しすぎて、生々しくて…もはや恐怖すら感じてしまった。

奇しくもSimpleと同じアルバムに収録されているこの曲は、ゆっくりと夜に溺れて沈んでいく中で微かに見える光に手を伸ばすような…私にはそんなふうに聞こえる。

끝이 안보여 계속되는 질문
終わりが見えない 繰り返される問い
내가 내게 묻고 다시 되물어 
僕は自分に尋ねて再び問い直す
이런 일들 버틸 수 있겠냐고
こんなことに耐えられるのかと
그럼 아무렇지 않은 듯 왜 못 버티냐고
じゃあどうして何ともないように耐えられないのかと

「終わりが見えない」
今の私のしんどさはこの一言に尽きる。
耐えて忍んで私が頑張ればこの苦しさには終わりが来ると思っていた。
終わらないにしたって、少しは光が見えると思っていた。
そう思いながら毎日出社して、自分の無能に打ちのめされて、怒られたり罵られたりして、それでも毎日また自分を奮い立たせて足を前に踏み出して
…何も変わらないまま半年以上が過ぎた。
繁忙期で膨れ上がったのだと思っていた業務量も
一向に減らない。

1月の私は、2月には元通りだろうと思っていた。
2月の私は、4月には大丈夫になるだろうと思っていた。
4月の私は、8月にはマシになるだろうと信じていた。
8月の私は…終わりが見えなくなった。
終わりだと思っていた場所に辿り着いても、そこに終わりはなかった。

流石に疲れてきてしまった。
すくむ脚を叩いて叩いて前に進むのにも疲れてきてしまった。
これが普通なんだろうか。
社会で働く人はこれくらい耐えられなきゃダメなんだろうか。
また、私が弱いだけなのだろうか。

사실 아니 조금 많이 힘이 들어
実は いや ちょっとかなり辛い
혼자 끙끙 앓고 있었던 내 비밀 들어줄 사람
一人で呻き悩んでいた僕の秘密を聞いてくれる人が
하나 없다는 그 사실이 
一人もいないというその事実が
날 울컥 하게 만들어버리는 이 현실이
僕に吐き気を催させてしまうこの現実が
날 울려 
僕を泣かせる

「辛い」「しんどい」
それをちゃんと言葉にできるようになるまでにも、ずいぶん時間がかかってしまった。

前にnoteも書いたけれど私には幸い同じ課に同期がいて、お互いしんどくなれば吐き出すことができる。
奇跡だと思う。同期との人間関係に悩む人だってたくさんいるだろうに、彼女は私にとって純粋に良き同期であり、友達でいてくれている。
彼女がいなかったら私はとっくに折れていた。
でも、それでも私たちが立ち向かわなきゃ行けないこの現実に私はずっと反吐が出るよ。

끝이 안 보여
終わりが見えない
침대에서 두 눈 떴을 때,
ベッドで目を開いた時
아직 무중력 한 꿈에 헤어나지 못한 채
まだ無重力な夢から脱け出せないまま
아침은 왔는지, 밤인지도 모르고 세면대에
朝が来たのか 夜なのかもわからず洗面台で
몽롱함 헹궈 내려 해도 왜 그대론데
朦朧として洗い落としてもどうして変わらないのか
내 거울에 보이는 나는 며칠 밤낮의 화장 덕에
鏡に映る僕は連日昼夜問わずしていた化粧のせいで
상당히 상한 피부와 목적을 잃은 듯한 초점, 
ひどく傷んだ肌と 目的を失ったような焦点
그 밑에 다크가 삽질하는 것마냥 더 깊어가
その下でクマが掘ったかのようにさらに深くなっていく

トイレで一息ついて、手を洗って、顔を上げて鏡を見ると、本当にひどい顔をしている。
泥みたいな顔。
あくまでデスクワークで、ほぼ机から一歩も動かず仕事しているのに汗が流れて化粧は落ちて、何より表情が歪んでいる。

自分でも不快感を覚えるほどの顔に、愕然とする。

そこで初めて疑問に思う。
「私がこんな顔になってまで働いてる理由って、
なんだっけ?」

夜中に目が覚める。
明方という方が適切かもしれない。
起きている間は色々なことをして気を紛らわせているけど、夜中に目が覚めるともう最悪。
いろんなミスや、終えられていない仕事や、それに対して考えられる最悪の展開ばかりが脳裏を駆け巡る。

ひとまず洗面台に行く。
また自分の顔を見て愕然とする。
私、こんな顔だったっけ…

疲れた顔した女に仕事頼もうなんて思わないでしょ?
笑顔ひとつで仕事回るなら安いものよ♡

昔読んだ漫画にこんなセリフがあった。
女だから愛嬌振り撒かなきゃとは思わないけど、
話をしていて気持ちのいい人間でいること、
その時の自分の機嫌を相手に(少なくとも社外の人には)覚らせないことは仕事をする上で大切にしたかった。

それは決して「仕事ができる」とは言えない私が、
何もできなかった一年目の頃から大切にしていた唯一の矜持だった。

けれど今の私はそれができている自信がない。
多分オフィスでもひどい顔して歩いてる。
電話の声くらいは常に明るく!と思っているけれどそれすら自信がない。

우주를 떠도는 기분
宇宙を漂う気分
어디로 가야 할지를 몰라도
どこへ向かえばいいのかわからなくても
저 멀리 별이 날 이끌어
遥か遠くの星が僕を導く
I Can Feel It, I Can Feel It
내가 빛이 될 수 있음을 느껴
僕が光になれると感じて…

ソクさんの力強い声が闇を切り裂く。
闇を切り裂くのに、どこか孤独を感じる。
この歌で唯一希望を歌う部分なのに、暗闇を切り裂いて、そのまま遠くに消えていくような歌い方。

終わりが見えない。
終わりが見えないと思っていたら、いつしか自分がどこに立っているのかすら分からなくなった。
現在位置がわからない。まさに「宇宙を漂う気分」。

「僕が光になれると感じて」

…本当にそう思えていますか?
本当に希望を感じられていますか?
あなたには今本当に遠くの星が見えていますか?

…今の私にはこの歌詞が信じられない。
必死で言い聞かせて縋っているように感じてしまう。

サビの前までの歌詞の暗さ、しんどさ、虚無感…
そこに強く共鳴しているからこそ、分からない。

共鳴していたこころが一度鳴り止む。

끝이 안보여
終わりが見えない

출발선부터 쉬지 않고 달려왔는데 왜
スタートラインから休まず走り続けて来たのにどうして

원래 내 모습은 다 어디 가고
本来の僕の姿は一体どこへ行って

매일 나는 무얼 쫓는 지
毎日僕は何を追いかけてるんだろうか

でもまた共鳴し始める。
終わりが見えない。
努力が足りないんだと言われればそれまでだし
実際努力も工夫も足りていないんだろう。

でも別に手を抜いてきたわけじゃない。
自分の能力という檻の中で必死にもがいてきた。
なのに振り返って見える景色は虚しく、顔を上げれば暗闇しか見えない。目を開いているのか閉じているのかすら分からず座標を見失う。

난 괜찮다는 그 말이 거짓되지 않게
僕は大丈夫だと言うその言葉が嘘にならないように

매일 기도하는데
毎日祈っても

이놈의 기대치는 왜 이렇게 산 같은지
こいつの期待値はどうしてこんなにも山のようなんだ

터져 나오는 눈물을 닦고
溢れ出る涙を拭って

다시 가족들을 생각하며 끝을 꿈꾸네
また家族を想って終わりを夢見る

期待を裏切りたくなくて「大丈夫」と答る
でもその度に周囲が私に想定する「大丈夫」の期待値が上がっていく
その期待値が上がる速度に私が本当に「大丈夫」になる速度が全く追いつかない
そうしてまた裏切りたくない期待値が釣り上がっていく
いつしか自分が自分に抱く期待値すら上がってしまっていた。

ひとつも大丈夫じゃないのに
自分の積み上げた「大丈夫」に押しつぶされそうになる

誰かこの山を切り崩してはくれないか。
誰かこの苦を救ってはくれまいか。

それでも身近な人たちのことを想うと切り崩せない。
がっかりされたくないじゃないか。
身近な人たちが私を前に進ませてくれるし
大切だからこそ私を後に退かせてくれない。

끝이 안보여 날 좀 내버려 둬
終わりが見えない 僕をちょっと放っておいてよ

사실 너무 괴로워
本当はものすごく苦しいんだ

빡빡한 스케줄을 끝낸 뒤
ギチギチのスケジュールを終えた後

침대 위로 밀려드는 친구 가족들의 기대치
ベッドの上で押し寄せる友達や家族の期待

만으로도 두 눈 뜬 채 잠 못 들어
それだけでも目を開いたまま眠りにつくことができない

大切な人たちの期待が、大切だからこそ何よりも重くのしかかる。大切だからこそ裏切れない。

だからもうちょっと放っておいてよ。
1人になって眠りにつこうとすると重い何かが自分に覆いかぶさる。思考の波が押し寄せる。
あの時間の息苦しさは一体なんなんだろうか。

目を背けたいものたちが目前にまで迫ってくる。
鼻先に触れるくらいまで襲いかかってくる。
あの時間の恐ろしさは何なのだろうか。

뭐든 부딪혀보는 법을 잊었어
何であってもぶつかってみるようなやり方は忘れた

사소한 것들에 피하는 버릇 생겼어
些細なことも避ける癖がついた

끝이 안보여    뻔한 힘내란 말
終わりが見えない   白々しい「頑張れ」という言葉

예전 같지 않아 왜 이리 간절할까
昔と違って どうしてこんなに切実なのか

とにかく必死だった。
とにかく走って、ぶつかっても走って、
別に何か成し遂げたわけでもないけど、ずっとへっぽこのままだけど、それでも私なりに、不器用なりに、前だけを見て走ってきたつもりだった。

でもいつからだろう
ふと我に返って、体のあちこちが痛むことに気がついてしまった。
傷つくことが怖くなった。
怖いと思うことが増えた。
逃げるという選択肢が常に頭にチラつき、それを必死にかき消すようになった。

いつからだろう
「頑張れ」という言葉に怯えるようになったのは。
励まされているというよりは突き放されているように、なんなら責められているようにすら感じるようになったのは。

聞きたくない、聞きたくない、
励ましの声にすら耳を塞いでしまう自分に、またがっかりする。

저 멀리 끝에 내가 원하던 게 있을지도 몰라
遥か遠い終着点に僕が望むものがあるのかもわからない

원하는걸 얻는 건데
望むものを手に入れるのは

얕은 각오보단 수천 배는 힘들 텐데
浅い覚悟より数千倍はしんどいだろうに

그렇더라도 더 이상은 조바심을 낼 수가 없어 난
それでももうこれ以上は焦っていられないんだ僕は

다시 길을 잃는다면 나를 찾으면 돼
また道に迷ったら僕を探せばいい

そうか、Seventeenさんは誰かの光になりたくてその道を選んだのか。
誰かの歩く道を照らしたくて壁にぶつかり続けてきたのか。
苦も楽も、彼らの歩く道のりすべてが誰かの光になると信じて、ただその希望のみを見つめて、宇宙を漂ってきたのか。

우주를 떠도는 기분
宇宙を漂う気分
어디로 가야 할지를 몰라도
どこへ向かえばいいのかわからなくても
저 멀리 별이 날 이끌어
遥か遠くの星が僕を導く
I Can Feel It, I Can Feel It
내가 빛이 될 수 있음을 느껴
僕が光になれると感じて…

自分が光に導かれたから
今度は自分が誰かの光になりたい。

きっと誰もが一度は抱く夢なんじゃないだろうか。

私は、思ったことがある。
今も思っているのかもしれない。
自分のこの苦しみが、痛みが、誰かの光になるなら報われるのにと、ずっと夢を見ていた。

ただ、私は夢を見る力が弱かった。
だから夢が夢想のままだったんだ。

私にはこのサビの歌詞が自分に言い聞かせている言葉に聞こえる。
そうなのかもしれない。
けれどSeventeenさん達は少なくとも本当に「それ」を信じてきたのだ。
そして「それ」を本物にしてきたのだ。

私にわかるわけがなかった。
この歌詞はSeventeenさんたちだけのものだ。
彼らの痛みは私に寄り添ってくれたけど、
彼らの希望は彼らだけのものだ。

いくら共感したってコピーすることのできない、
彼らだけの信念と覚悟だ。

Space

ずっとこの歌が怖かった。
恐ろしいくらいしんどい曲だったから。
そしてこのしんどさを私はなんとなく言葉の額面としてしか捉えることができなかったから。

でも今は自分のことのように思う。
終わりが見えない。
いつまで走ればいいのだろうか。
いつまで耐えればいいのだろうか。
この宇宙に果てはあるのか…

自分のことのように捉えられるようになったからこそ
一層恐しくなった。

Seventeenさん達はこんな思いをしながらここまできたのかと。
こんな…こんな思いを?
こんな痛みを…?
いやきっともっと苦しくて長い道のりだったと思う。

Love&Letter Repackageのアルバムを出すまでの間に
これだけの思いをして、そしてそれを言葉にできるまで、メンバーの前で口に出して、それを歌にできてしまうくらいまで何度も何度も自分の中で反芻してきたんだろう。

…こんな思いを?
どれだけ長い道のりだったんだろうか。
自分が実感を持って「終わりが見えない」と思うからこそ、この鈍痛を感じ始めたからこそ、彼らがそれを感じていたと思うと恐ろしくてたまらない。

ああ…でもしんどいなあ…
「Seventeenさんたちがこれを乗り越えたなら私も乗り越えようと思う」と言えればいいなと思うのに
今の私にはそれができない。

ただ、私がしんどくて、
彼らにはこんな思いをしてほしくないと祈るだけだ。

あなた達は私の光です

…そう呟くだけだ。

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