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ゆびのわ

拝啓

ねえホシくん、お喋りをしようよ。
って言っても私の永い独り言なんだけど、ちょっとだけでいいから聞いていってくれないかな。

こんなこと考えたくもないけど、いつかあなたがステージを降りて、スニョンさんとしての人生を歩み始め、ふとある日、自分が「ホシ」でいたことで人をどれだけ幸せにすることができたかのだろうかと気になる日がきたのなら、どうか読んでほしい。

きっと世界中のCARATちゃんたちが、それぞれの掌で柔らかく言葉の笹舟を編み、インターネットの大海原へそっと流していると思う。届くか届かないかは分からない、あなたの元にあたたかい言葉が届くのならばそれが私の言葉じゃなくてもいい。けれど、それでも、どうか届いてと祈りながらこの笹舟を浮かべます。

世界が美しいのは

6月15日の誕生花は、立葵という花らしい。
天に向かってどこまでもまっすぐ茎を伸ばし、可憐な花をたくさん付け、立った人の背丈も超えるほどの高さになるから「立葵」。
花言葉は「豊かな実り」「野望」。
あんまりにも、あつらえたようにあなたにピッタリな花なので、私はふふっと笑ってしまった。

あなたの生まれた素晴らしい六月、この国では一足早くたくさんの雨が降る。そんな私の国には「雨」を表現する言葉が幾通りもあります。

「催花雨」
菜の花の盛りの頃、花が咲くのを促すようにしとしとと降る雨。
「慈雨」
作物や人々が萎れそうな時に生気を与えるように降ってくる雨。
「篠突く雨」
篠竹の束を突くように強く激しく降る土砂降りの雨。
「瞋怒雨」
神の怒りのような大きな雷鳴を轟かせて降る雨。
「遣らずの雨」
大切なひとを帰らせないように降るかと思われるような激しい雨。
「静雨」
音もなく木の芽に降りかかる寂寥の雨。

…どれも「雨」のはずなのに、こんなにも様々な表情を持ち、見るひとの感情を投影し、心を揺さぶる。

それはちょうど、あなたのように。

私の目に映る世界の美しさは全てあなたへ還元され
あなたの美しさもまた、私の世界へと還元される。

ホシくん、あなたを思えば
夏の茹る暑さはキラキラと散る汗の花火に変わり、
秋の肌寒さは暖かな服装への期待を連れてくる。
東北では災害となる雪の昏さもあなたを一層美しく引きたてる灯りに見えるし、
春の匂いが鼻先に届く苦しさすら陽だまりに溶ける

ホシくん、あなたを思えば
あなたを思うときだけは、この世界はどう在っても美しい。

やっと…ようやく季節が一巡りしました。

あなたを想うとき

あまりにも壮大な言葉で讃えていると、あなたは私が虚像を見ているのではないかと思ってしまうかもしれません。

悔しいことに、私は「クォン・スニョン」の全てを知ることは絶対にできません。この先どれだけ目を凝らそうと、耳を澄ませようと、それは叶わないんです。

けれど私の目に映るあなたの美しさが、あなたの考える「等身大のクォン・スニョン」とかけ離れていたとしても、そんなことは大した問題じゃないんです。

この限りある命の中、今このタイミングで
こんなにも美しいと思えるあなたに出会えて
あなたをこんなにも美しいと思うことができた

…この事実が、どれだけ私の人生を肯定してくれたか分かりません。

ホシくん、あなたを想うとき
私はあなたごと私自身をも愛することができるのです。

どうか届いて

ホシくん。
私のペンネームである「秕」は
「殻ばかりで中身のないもみ、うまく実らず萎びてしまった果実、空っぽなもの」
という意味の言葉です。
皮肉なことに、この言葉を知った時に私は「まるで自分みたい」と感じてしまいました。
そんな人間なんです。

でもねホシくん。
あなたを思い浮かべながら書いてて思ったんです。こんな「うまく実らなかった空っぽな存在」にさえ、この世界ではちゃんと名前が与えられているんですね。名前という「居場所」を与えられているんですね。

…どうかな…伝わるかな…
ホシくんに出会ってから、私はこんな風に身の回りのもの一つ一つにあたたかい意味を見つけてこれたんです。
今まで恨むような目でしか見ることができなかった世界も、人間も、一番嫌いな自分自身にすら、柔らかい意味を見出すことができたんです。

大袈裟じゃなく、あなたは私の光です。

これがどれだけの大事件なのか、一体どうしたら伝わるんでしょうか。

ホシくん。
私のTwitterのアカウント名である「밤」は「夜」を表すあなたの国の言葉ですね。

私が初めてSEVENTEENについて書いたnote「この夜を照らすのは」の通り、「キラキラホシ」であるあなたが最も輝く時間。
かつて練習生時代に「誰よりも切実に光になりたかった」と歌ったあなたが一際輝く時間…

「ホシ」という名のあなたに似合うようになりたくて、この名前を考えました。
そして何より、先の見えない暗闇に沈む私をあなたが照らしてくれた…そんなあなたへの感謝を込めて名前を決めました。

分かるでしょうか、伝わるでしょうか
向かい合って、手を握って、まっすぐ目を見て、あなたの国の言葉で伝えられれば…
この感謝と愛は伝わりますか?
私の書いた文章を全部読んでもらうことができたなら、この感情は伝わりますか?

どれだけ手を尽くしたら、この気持ちは伝わるんでしょうか…

いや…きっとあなたにはわからない…

冷たい言い方に聞こえるかもしれないけれど、あなたの話だからこそ、あなたにはきっと分からない。
この想いはあなたに救われた人にしか、きっと分からない。

でも…それでも私は伝えたい。
ホシくん、あなたが光なんです。
あなたがこの夜を照らす光なんです。
どうか届いて…

あなたの歩く道を

ホシくん、生きてきてくれて有難う。
あなたの人生、私の人生、どこか一つでも違う選択をしていたら出逢えなかったかもしれない。
出逢えていても、これほど好きになれなかったかもしれない。

ホシくん、生きてきてくれてありがとう。

私はアイドル・ホシを
その揺るがぬ土台である人間・クォンスニョンを
今日まであなたが一歩一歩踏みしめてきた道全てを
心から愛しています。

そしてあなたが
これからどんなアイドル像を魅せてくれるのか
どんな人間になっていくのか
どんな道を選んで、切り拓いていくのか…
それを目を離さず見ていたいです。

あなたが、あなたの意思で選び
あなたの手で掴み取る
その未来が最も光を放つ。

どうかその未来を、光を、
少しでも永く見せてください。

あなたの歩く道は

私はあなたの全てを肯定したい。
誰よりもあなたに対して肯定的でありたい。

けれど全肯定というのはときに最も乱暴であり、無責任であり、思考停止であり、押し付けですら在り得ると思います。

私はそれがとても恐ろしい。
あなたに「好き」以上の何かを押し付けることが心底恐ろしい。

あなたの歩く道は、あなただけのものです。
私の歩く道もまた、私だけのものです。

私はその事実をわかっていたい。
この事実を抱きしめたい。

あなたの歩く道はあなただけのもので
私の歩く道もまた私だけのもので
何人たりともその道を代わることはできないし
何人たりともその道の全貌を知ることはない。

けれどあなたは他の人を照らし照らされる道を選び
私はこの道の途上であなたという光を見つけました

この愛すべき道の交差を私は大切にしたいのです。

私たちは傷つけあわない
私たちは傷つけあえない

だけど、だからこそ忘れたくないのです。
それでもこの道の途上で交差することができた奇跡を。

こんなこと敢えて言葉にするのは傲慢だけど、敢えて言葉にしなければ絶対に伝わらないから…

ホシくん、私の想い描く「ホシ」「クォンスニョン」の像など、簡単に裏切ってもらって構わない。
あなたの望むまま、思うまま、そのまんまで道を選んで行ってください。

あなたは人間で、私も人間で
ひとは揺らぐから美しい。

あなたが人間で、私も人間で、
本当によかった。

ゆびのわ

約束は好きじゃないです。
人に関わることなら尚更。

光輝く約束が、いつしか鈍く錆びた鎖になるのが嫌だから。

だから私は今日の日までの私の気持ちに
嘘偽りがないことだけを約束したい。
あなたを見つけたあの日から今日まで、
間違いなくあなたは私の光でした。
俯いて夜を歩く私に、見上げれば綺麗な星や月が在るのだと教えてくれた光でした。
暗闇に見える夜でも、目を凝らせば何も見えないわけじゃないのだと教えてくれた光でした。

ありがとうも、大好きも、愛してるも、
一言では全然足りないこの気持ちの約束を
君の手に…

来年もきっと好きだけど
来年の好きはきっと今とは違うから約束はしません

来年は来年でまた新しい約束を綴ります。
形を変えながらも繋がれてきた、あなたたちの手に輝くゆびのわのように。

ホシくん、生きてきてくれて有難う。
あなたの光が広く永く残ることを、そしてあなたのこれからが優しくあたたかい光に包まれることを、全身で強く祈っています。

かしこ。

2021.06.15 秕/밤

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