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Mirandus
仕事で嫌なことがあった。
その詳細は話の主題にあまり関係がないので書かないけれど、職場の上司の言動について、その人が何を考えてそうしたのかは理解できるものの、あまりにも配慮に欠けていると感じる出来事が重なった。
仕事である以上、組織である以上、互いの正義の軸が重ならないというのはよくあることだし、それが健全さを保つことに繋がるのだろうと思っている。実際その上司の考える正しさは私に新しい視点をもたらしてくれるし、納得することも多い。それでも耐え難い…と感じてしまった理由はなんだろうと考えてみた。
「僕、間違ったこと言ってます?」
その人から度々発せられる言葉だ。
その上司の性格的に、間違ってるなら間違ってると指摘しても会話は続くのだろうとは思う。ただ、元来この言葉を発した時点で「いいえ」以外の回答は相当困難だし、その先には断絶しかないなと感じる。
さらに言うと、話す内容の正当性に、それを伝えること自体や伝え方の正当性を包含してしまうことに賛同できない。正しければ言っていいのか、正しければどんな伝え方をしてもいいのか…わたしは違うと思う。
相手にわからせたいなら言い方は重要だし
どんな正論でも「自分が言いたくて言ってる人」の言葉は受け入れ難いもんだ
デビルズラインという漫画の中にこんな言葉があって、この視点を大切にしている。もちろん、自分に対しても。
正しいからといって言いたいように言ってしまうことは暴力的だし、非建設的だ。
そんなモヤモヤを感じたうえで、11月29日の名古屋公演に参加して、ホシくんのメントを聞いた。
日本ツアーの初日、メントのトップバッター。
「実はこういうツアーはしばらくできないんです」「みなさんがこうして素敵な思い出をくださったので、僕はこの思い出を胸に行ってこれるように思います」「すぐに行くわけじゃないですが、とにかくありがとうということです」
心臓がキュッとなった。
分かってた。ずっといろんな場面で言ってくれてた。
なんでそんなこと言うの!とCARATに言われても、どうせ行かなきゃいけないから、また帰ってくるからと、あっけらかんと伝えるホシくんの姿を見てきた。
それはそうなんだけど…と思う。
メソメソするつもりではないけれど、だからといっと「じゃ、いっか!!!」とは到底思えない。
自分が日本人であることで、兵役というもの自体について心の距離と振る舞いとを計りかねているところもある。SEVENTEENしか知らないから「普通はこんな感じ」というのも分からない。
キュッとなった心の痛みを無視しながらここまで来たけれど、正しいことを正しいまま伝える彼の姿を見たときに、優しい人だなと思った。
上司に対しては暴力的だと思ったけれど、ホシくんのそれは、私にとって間違いなく優しさで、誠実さだった。
好きな人だから良いように捉えているのかもしれない、信頼の積み重ねの違いかもしれない。
ただ、メントの後の無限アジュナイスで長い長い花道を身体がちぎれて飛んでいってしまうんじゃないかと思うくらい全力で走っていく姿を見て、これが最後みたいに力の限り端から端まで走っていく姿を見て、鳥肌が立つほどの咆哮を聞いて、CARATの光の海に両腕を広げて見つめる姿を見て…
「なんてことない」ことの様に兵役のことを話すけれど、いくら戻ってくる意志が強かろうと、このひとにとってステージに立てない期間が「なんてことない」わけがないと思った。
このひとは、別に正論であることに託けて「自分が言いたくて言ってる」んじゃないんだろうと。
そのとき…これはもう私の個人的な解釈で、都合のいい妄想かもしれないけど、
この、寂しさ、名残惜しさ、どうしようもないと分かって押し込めているけれど行かないでと駄々を捏ねたくなる気持ち、今この一瞬一瞬をなんとしてでも刻みつけたい気持ち…そういうものを先に受け止めてくれてるんじゃないかと思った。
寂しいよってひとりで思うことと
寂しいよって言えることは違う
いつか来る「その日」以降のための心の準備だけじゃなくて、「その日」まで共にする今この瞬間を分かち合うんだ。
「大事にしたいのは僕らの今」で、
だからあなたはそこで、壊れちゃいそうなくらい全身全霊で、爆ぜているんでしょう。
…そんなことを考えながら、これがホシくんの意図するところであってもなくても、私はやっぱりホシくんの選ぶ優しさや誠実さの在り方が大好きだと再確認した。
私はいつも言うか言わないか迷ったら言わない選択に逃げてしまうから、ホシくんの聡明さが眩しい。針の穴に糸を通すようなその誠実さにハッとして、途方に暮れて、それでも尚どこかで師として仰いでいる自分がいる。
苦手なこと、難しいことばかりだけれど、あなたのことを眼差し続けていたい。
まずは、会いに行きます。
伝えに行きます。
あなたは、綺麗だということ、
ここにいるよ、ということ。