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『 大人の恋の歩き方 』電子書籍配信中

表紙はイラストレーターのrancho様に描いていただきました。
その節はありがとうございました♡
表題などの文字入れは出版社の方で入れていただきました。
出版は、- いるかネットブックス様-より-71-73-9/8

◇さっそく抜けが見つかりました。😭
❧あっ、ちゃんと取り決めしてから君の納得行く形でお手伝い進めていくよ
  うにするから心配しないで。心配の(心)が抜けてました。

2024年8月9日 記

発売日: 2024年08月 09日
サンプル文
を掲載

一番下に各電子書店(Amazon/楽天kobo  etc,)のリンク貼り付けあります。
まだ表示されていない書店は随時追記していきた いと思います。


【それは突然に……】

今日はめったにない早帰りになり、寄り道せずお店(美容室)から真っ直ぐに帰宅したので16:30過ぎには自宅に着いた。

折角だから夕食に少し凝ったモノを作ろうかな、なんて思いながら鍵をカギ穴に挿し込んだ。


違和感が……。

鍵が開いているみたい。なんだ、もしかして何かの事情で武士も早帰りしたのだろうか? そっとドアを開けた。

視界に飛び込んできたのは、あるはずのない女物のヒール。


狭い玄関にこちら向きに並べられている。これは……どういう……?

そんなこと……まさかね。
そんなことあるはずないと、気持ちを宥めながらも何故だか反射的に私はスマホを鞄から取り出し、薄い生地のジャケットに付いているポケットへと忍びこませた。


各々の部屋に繋がる廊下を、そろりそろりと歩を進ませた。


寝室のほうから物音がしているような気がする。

寝室から? 

ちゃんと閉じられてないドア、中からは僅かに人の気配。

嫌だ、悪い想像しか出来なくて大きく心臓が騒ぎ出す。

ドア開けっ放しでなんて考えられない。
クリアーになっていく物音。


私は扉に手をかけ、そっと開いた。
ちょうどヤってる真っ最中のところに遭遇してしまったようだ。


頭の中は真っ白、……なのに私は気が付くとスマホでふたりの行為を
録画onしていた。


数秒、数十秒、と、続けてしばらくの間まんじりともせずon状態。

武士の動きがクライマックスを迎えそうな気配を合図に私も録画をoffにしてそっと元来た廊下に踵を返した。

無我夢中で玄関に辿り着いた私は、物音をたてないよう靴を履きそっとドアを閉めた。

自分達の行為に夢中で奴らは私の存在に気付いてないと思う。
夢でも見ていたような気分だ。


私はマンションのエントランスを潜り抜けると、一刻も早く自宅から離れたくて小走りに駆けた。

どこに行こうか? こんなこと、迂闊に人に話せやしない。
だけど、どこか……誰かに……この胸の内を吐き出したくてたまらなかった。


そんな私が行けるところ……。
私は何度か利用したことのあるネットカフェに直行した。

自宅に帰るのか? 今夜だけでもここに宿泊するのか? 考えをまとめられない私はひとまず1時間1000円で個室に入店した。
 


喧嘩もしてない、気まずいことも何もなかったはず……どころか朝お互いに家を出るその時まで、穏やかで幸せな時を共有していたはず。

そう思っていたのは私だけだったというのだろうか。


ふたりの関係はいつからなのだろう。どちらにしても武士は今のいままで私には何も言ってきてはいない。
これはどういうことなんだろう? 


私に話す機会を探っているところなんだろうか。
彼はどうしたいんだろう、どうするつもりなんだろう。


あの女と私、天秤にかけてるの? 
私が『全部知ってるんだよっ』て話して問い詰めたら、どんな言動を……言い訳を……してくるのだろう?

 黙っていればしばらくは、今まで通りの平和な関係でいられるのかもしれない。

だけど、いつまでも今のままではいられない。

きっと私の身がもたない。大好きでずっと一緒に夫婦のように暮らしてきた相手と、別の身体の関係もある女性の存在を知りつつ、今まで通りの穏やかな気持ちで暮らせるはずがない。


そんなやこんな考えが私の頭の中をグルグル駆け巡った。

私が2年付き合って7年間同棲している瀬本武士は、幼少期に受けたトラウマが原因で結婚願望のない男性《ひと》だ。

これまで家事も私と同じようにこなし、この9年間というもの喧嘩らしい喧嘩もしたことがなく。

休日にはデートを兼ね買い物をし、そしてそのまま外食という流れに。
帰宅後は共に映画鑑賞などで寛いで過ごすという概ねそのような時間を共に過ごしてきた。

それなのに……。



【サポーター現る】


 以前から時々覗いていたサイトで呟いた。
誰か……誰か、私を助けて!


『20才の時から付き合い、一緒に暮らしてきた相手が浮気してた。
仕事を早退して家に帰ったらベッドの上で知らない女とヤってた。
まさにその最中を見ちゃった。どうしよう、どうしたらいい? わたし』

 誰か、何でもいいから私に話しかけて。祈るような気持ちで書きこんだ。



『なぁ、最中のふたりは君に気が付いた? それとも気付かずにいた?』

 思ってた以上の速さでメッセージがきた。
逸《はや》る気持ちを抑えながらキーボードを打つ。



『私、動転しちゃって……スマホで少しだけ録画してそっと部屋を出てきたから彼らには気付かれてないと思う』

『彼氏が君に素直に謝って、もう相手とは手を切るって言ったら許せるの?』

『心からの謝罪と反省があれば、許したい……かな?』


『ふ~ん、まだ好きなんだ。
じゃぁさっ、もし逆に居直られて彼から、僕と別れて欲しいなんて言われたとしたら、どうするかっていうのをひとまず考えとけば? 

それとも謝罪してくるって自信ある? 
そうだなぁ、許すの前提なら私からのアドバイスは何もないなぁ。

まっ、『見たよ浮気は止めてっ』とでも可愛く泣いて責めとげばいいんじゃない? 

 あのさぁ、君より長生きしてる人生の先輩としての意見を言わせてもらうと、20才の頃から付き合って何年も同棲してるのに一緒に住んでる家に女連れ込んでSEXしてるヤツなんて不誠実で、表向きはどうか判らんけどもさ、おそらく心からの反省だとか謝罪の気持ちは微塵も持たないと思うぞ!

 どう? ここは今なら証拠をGetする方法もあるからさぁ……相手を責めてしまって証拠を握れなくなる前に保険かけとかない?

 証拠さえ取っとけば後々どっちに転んでもいろいろと使い道があって君の助けになると思うんだが』



『相談に乗ってくださってありがとうございます。
私、武士がこんなことするなんて未だに信じられなくて。

私が問い詰めて泣いて怒ったら、謝って私のところに気持ちが戻る……ってそう思いたかったんですけど、あなたの忠告を聞いてたら……そうですよね、最悪のシナリオ考えとかなくちゃ駄目ですよね』


『私でよければお手伝いしますよ? 
いきなりこんなこと言われたら怖いよね? 
それに世の中タダより怖いものはないからね。

そういう意味でも無論、アルバイト料はちゃんともらうから。

あっ、ちゃんと取り決めしてから君の納得行く形でお手伝い進めていくようにするから心配しないで。どう? この提案』



『お願いします。いろいろと相談に乗っていただけると助かります』

 この時の私はまさに藁にも縋るという心境で、普通ならとてもじゃないが頼んだりはしないだろう、どこの誰とも分からない見ず知らずの人間に頼ろうとしていた。

知らない相手に対する不安や怖さよりも、助けてほしい、誰かに縋りたい、という気持ちのほうが勝っていて恐怖心は雲散霧消していた。


『じゃあ、捨てアドなんだけどsupportman@gmail.comに君のメールアドレス書いて送って。
 次からはメールで打ち合わせしよう』

『あっ、はい。分かりました』

『どこから書き込みしてるの? 』

『今ネットカフェなんです』


『ひとまず念のため履歴消しといてね。それとスマホあるなら今日はスマホ使って』

『分かりました』



 こうして私と星野と名乗る男性ひととのメールでのやりとりが
始まった。

こんな緊急事態に……心から誰かに縋りたい時に現れた星野の存在は、果てしなく果てしなく、私にとって大きいものだった。

1人では到底抱えきれなさそな大きな問題を抱えてしまい道に迷った、はたまた親とはぐれた幼子のような私にそれは差し伸べられた救いの御手みてとも言えた。


お前はひとりじゃない、お前が道を誤ることのなきよう使いを遣ったから心を強く持って前に進むのだよ、と励まされたような気がした。

来たー、メール!



『君の部屋がヤリ部屋になってるようだから、証拠を掴むにはもってこいだな。

君さえ、よければ私が直々に部屋にいろいろな撮影機器を持参してセッティングしてもいいのだが、プライバシーのこともあるし、どうだろう?

 レクチャーするのでひとまず君が頑張って現場を録画できるよう頑張ってみる?』


『そういうのって、後から犯罪行為として訴えられ案件になったりしないんですか?』


『うん、そうだね。やり方を間違えるととんでもないことになるかもね。
だけど浮気調査なんかでは興信所は結構やってるよ? 

何せ浮気や不倫なんかする輩は、男でも女でも厚顔無恥なヤツが多くて現場の写真見せても、自分じゃないとか言い張って拒否るヤツ多いからねぇ~。


そんな奴らに手も足も出ないくらいギャフンって言わせて勝負に勝つにはコレくらいのこと興信所辺りじゃ昨今当たり前だよ?

 ぐうの音も出ないぐらいの証拠こそが、まぁ言えば証拠になり得るってことだな。

 君はいろいろと怖いだろうね、分かるよ。


何かトラブルになりそうになった時は『興信所に頼んだけど途中で連絡が取れなくなって自分も困り果てていたところだ』とでも言っておけばいいさ。


そしたら万が一問題が大きくなっても探偵、すなわち私のことになるが、
私が金欲しさに依頼された証拠のブツを悪用したということになると思う。

 そして私は警察から追われる身に……って、HaHaHa。大丈夫、私は失敗しないから』



 星野さんは不思議な人物ひとだ。

彼の放った、『大丈夫私は失敗しないから』の表明は、私にとって偉大な
言葉となって胸に響いた。


どうしようか、私は奴らの行為撮りを自分でするか星野さんに頼むのがいいか、メールの遣り取りをしている間中、迷った。


悩んだ末、私は彼から機器のアドバイスを貰いながら、ひとまず自分でセッティングしてみることに決めた。


『星野さん、行為撮りの件ですが、自分で出来るか分かりませんがひとまず自分でやってみようと思います』


 そうメッセージを送ると、打てば響くような返信が届いた。


『分かった。どうしても上手くいかなければ、最後は私がやるよ。
まずは天井からのが欲しいね。


簡単取り付けの電球型監視カメラってのがあるから、購入次第送るよ。

この電球タイプの監視カメラなら既存の電球を取り外して代わりの監視カメラを差し込むだけで済んで不倫調査が終わったら元に戻すのも簡単なんだ。

次はっと、ティッシュケース型監視カメラも設置しやすいから送っておこう。

最低でも3箇所から撮りたいな。
あとはどんなのにするか実際ブツを送る時に説明するとしよう。住所と氏名教えて!』


 住所と氏名、見ず知らずのひとに教えるなんて正気の沙汰じゃないけれど、今の私は正気でなんていられないンだよぉって見えない何者かに向かって強く言い放つ。


住所と本名知られたからって何よ、何かするつもりならやってみなさいよ。

小心な気持ちを鼓舞しながら私は星野さんに住所と氏名を書いて送信した。あぁ、これでもうサイは投げられた。


『住所と名前確かに受け取ったよ。何かあった時の為に私の電話番号メモしておくから、最悪の場合は頼って? 
それと私の口座番号、これに後で品物の実費を振り込んでね。いくら掛かったかは領収書コピー添付のメール送るから』


『ええ、分かりました』


『届くまでに2~3日掛かりそうだが、撮影機器は直接SHOPから君ん家の最寄の郵便局留めで送ることにしよう。

 同居している君の恋人に万が一気付かれるとまずいからね。OK?』


『It’s ok』と思わずノリで返した。


『それと、機器が届いて設置完了、録画いつでもOK状態になったら恋人がなるべく不倫相手の女性を君の自宅に連れ込みやすくなるように、夕方から深夜にかけて、残業が入ったとか友人と会うことになったとか、いろいろ理由をつけて彼らを泳がすようにしてみて』


『了解です』

『OK.じゃぁ、また』

 私と星野さんの個人的メールの遣り取りが終了した。終わってみてほっとしたら、現実にあったこととは思えなかった。

武士の浮気も星野さんとの遣り取りも何もかもが、別の世界で起きたことのように思えてならなかった。



【未来の決意】


 夢中でメールの遣り取りをしてた。
もう星野が現れないパソコンの画面を見つめながら、話せる相手のいなくなった寂しさ半分の、そして残りの半分はほっとする自分がいた。


遣り取りが終わりほっとしたのも束の間……どうしよう、これからって、家に帰るしかないよね?

 帰宅しても、見たことはしばらく胸にしまっておかなくちゃ。

知り合ってから9年間、仲良くしてきた恋人がこんな形で自分を裏切る日が来ようとは、誰が想像できたろうか! 

誰が……だれが、そんなこと受け止められるだろうか! 

疑いだけの段階だったならば、信じ切っていた私は素直に武士に問い詰めたかもしれない。


 だけど、あんなシーンを自分の目で見てしまったからには、今まで持っていた彼に対する信頼は粉々に砕け散ってしまい、問い詰めることなんてとてもじゃないけどできやしない。


問い詰めるとするならば、星野さんが言ってたように最悪の場合を考えて動くしかない。

……っていうか、時間が経過するほどにあんなに身近に感じていた武士が遠くまた遠くへと離れていくようで、喪失感が半端ない。星野さんの話を聞いてしまったせいだろうか?

 長きにわたり私との2人の時間を過ごしてきた自宅に、女性を連れ込むという行為は、浮気であれ不倫であれ私の持ちうる常識の範疇外だ。


モラルもクソも失くしたような振る舞いの出来る今の武士には、責めても謝ってはこないような気がするし、あるいは縋ったとしても、いとも簡単に私を切り捨てるような気がしてならない。


幾度となくこの先の私と彼との遣り取りを想像してみるのだが、私が心密かに望んでいる形……すなわち、武士が今回のことは只の気の迷いで単なる
浮気、本気じゃなかった許してほしいやり直したい、なぁ~んて謝ってくる? 

そんな私の望むような回答には悲しいかな幾ら考えても辿りつかないのだ。



星野さんの危惧する結末と私の想像する結末は悲しいほどリンクしている。

今自分はオタオタしているけれど、相談できる人をひとり、それもなかなか男女の揉め事に詳しそうな人物をGetできたのだから、もうやたらと考えても詮無いせんないことをメソメソ考えるのは止めようよと、自分に喝を入れた。


とにかく今するべきことを星野さんから指導されているのだから仕事と思い、淡々とこなしていこう。そう、ひとつひとつ。そうすればいつかは終わるんだからね。

ここまで自分の気持ちを整理したら、不思議とすっと自宅へ帰ろうという気持ちになれ、私はようやくネットカフェを後にした。


ネットカフェを出た後、時間を確認するともう21時近くになっていた。

あぁ、星野さんとのやりとりの時間くらいは、そのあとぼーっといろいろ
考え事してるうちに結構な時間が経っていたみたい。


やばいっ、早く帰らなきゃ。


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この続きは電子書籍で読んでいただけるとうれしいです❧☺

こちらの作品は書下ろしではなく投稿サイトなどで以前掲載していた
旧作品になります。未読の方、如何でしょうか。

二組のカップルのお話で……
88400字と少し電子書籍では長めのお話になります。










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