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武蔵美デ情3、4年生向け演習「SFベンチャービジネス」について

こんにちは、武蔵野美術大学デザイン情報学科で非常勤講師をしている新井と申します。2024年まで2年選択必修の「webデザイン基礎」の授業を担当していたのですが、2025年度から3、4年生を対象に「SFベンチャービジネス」というちょっと変な授業を担当します。

受講を悩んでいる学生がいたら、是非読んでいただけたらと思います。

講師について

新井 俊樹
アートディレクター / UXUIデザイナー
1989年 東京生まれ
2011年 武蔵野美術大学デザイン情報学科卒業
    株式会社ラナエクストラクティブ入社
2018年 武蔵野美術大学デザイン学科非常勤講師
2018年 Neru Inc.設立

デ情を卒業後7年間、webサイト制作を中心とした制作会社に勤めていました。2018年に独立し、今は「Neru」という自分の会社でサービスデザインとブランディングデザインを中心に活動しています。詳しくは会社のサイトをご覧ください。

授業概要

SFベンチャービジネスの「SF」はそのまま、Science Fictionの略です。
この授業は空想の世界を設定し、その世界でベンチャービジネスを立ち上げる、という授業です。

初年度のテーマはこちらです。

課題
2035年、完全な汎用人工知能(AGI)に誰もがアクセスできるようになった世界で、新規ビジネスを立ち上げてください。

授業は大きく2部構成になります。

1.SF世界をソウゾウする

AIが描いた「2035年 AGIに誰もがアクセスできる世界」

まず学生の皆さんには、課題となる世界がどのようなものかを具体的にイメージしてもらいます。AGIが日常になった世界で、人々はどのように生活し、どのように仕事をし、どんな悩みを抱えて生きているのかを考えます。

普段通っている学校はどのように変わるのか。デザインやクリエイティブ、政治、医療、メディア、交通などの産業はどう変化するのか。日常生活にはどのような変化が訪れるのか。これらを想像し、創造的にまとめてもらいます。

この「SF世界考察」については、クラス全員で1つのものをまとめる予定です。

2.ベンチャービジネス

ビジネスキャンパスモデル

次に1の世界において、新規ビジネスを立ち上げてもらいます。

美大では、UIUXやブランディングを扱うことはありますが、そこにとどまらず、マネタイズや、資金調達といった面もビジネスモデルキャンバスを使って制作していきます。

注意点
「AIが教えてくれる学習塾」など誰もが考えられるようなものは既存の大きな資本を持った企業が強いためNGです。1の世界にまだ存在しない新しいサービスを考えましょう。

この「ベンチャービジネス」については、グループ(4人まで)または個人課題を選んでもらう形になります。グループの場合も一緒になるメンバーは自由に選んでもらいます。授業をとる前に一緒にやりたい人を誘うのもアリです。

授業内容

AIが描いたSFベンチャービジネスの授業風景

13週の各授業は以下のように考えています。

第1回:オリエンテーション(生成AIの使い方)
課題の説明のあとに、生成AIの使い方などを学習します。

第2、3回:SF世界考察
全員でSF世界をソウゾウします。

第4、5、6回:ビジネスモデル
グループに分かれ、ビジネスモデル・キャンバスを使いながら、新ビジネスを考えます。

第7、8、9回:UIUXⅠ
考えたビジネスのモックアップを作成し、具体化していきます。

第10、11回:ブランディング
考えたビジネスのサービスのVIや、広告ビジュアルを制作します。

第12、13回:展示とプレゼンテーション
学内展示にて発表を行います。
また、作品はwebにアーカイブしていく予定です。

授業の狙い

ふざけた授業だと思うかもしれないですが、個人的には現代のデザイナーに必要な、本質的なポイントを含んでいると思っています。

現代のデザイナーに求められているのは、リアリティのある実現力と、ファンタジーな妄想力である。

近年、デザインとビジネスの距離が急速に縮まり、デザイナーには事業への具体的な貢献が期待されるようになっている。多様な要望に応え、問題を解決し、具現化する「実現力」は、デザイナーが持つべき基本的な能力になったといえる。

一方で、「実現力」に重きを置くほど、もう一つの重要な能力が浮かび上がる。それが、未来を見据えたビジョンを描く「妄想力」である。ビジネスが直面する課題を解決するためには、大胆な発想や、まだ誰も見たことのない世界を創り出す想像力が鍵となる。

夢と現実を橋渡しする力を持つデザイナーこそが、これからの時代において真に価値ある存在になるだろう。

上記はシラバスに書いた内容ですが、やや硬く書いたので、こちらでは少し砕いて説明します。

まず、現在のデザイン業界ですが、ビジネスに強いデザイナーが求められるようになっています。単に見た目を整え、美しくするだけではなく、数字を伸ばせるデザイン力が必要とされており、UI/UXデザイナーといった職種が注目され続けています。ただし、UI/UXデザイナーの数はここ5年ほどで大幅に増加し、単にアプリのUIを作れる程度のスキルはもはや珍しいものではなくなっています。

こうした中で、デザイナーにビジネスの現場でさらに活躍してほしいのは、「ぶっとんだアイデア」で未来を切り開く発想力です。僕自身はこれが、UI/UXデザイン、サービスデザイン、ブランディングといった多岐にわたる分野で、デザイナーがより一層力を発揮できる部分ではないかと思っています。また、高学歴の優秀な人が理論的に考えたことに対して、美術系/クリエイティブ系の人が長年蓄積してきた妄想力が、それを凌駕する可能性があると感じています。

もう一つ、未来を予測する力も非常に重要です。インターネットの登場以降、世界の変化は加速度的に早くなっていますが、そのスピードはAIによってさらに加速するでしょう。この文章もAIを活用して素早く書いていますが、同様に僕らが作るデザインもAIによって生成可能な時代になりつつあります。これからどのような未来が訪れ、どんな仕事を選んでいけば生き残れるのか。常にそれを考えながら、自分の生き方を決めていくことが、これからの時代においてますます重要になっていくでしょう。

授業の狙いまとめ

まとめるとこの授業の狙いは下記の3つです。

① 事業計画書を作ることで、新規事業を創出するための知識および実技実践を習得する。
② 架空の世界を想像することで、抽象的な思考に基づいた発想力、企画力を養う。
③目まぐるしく変化する社会の中で、未来を予測する意識を身につける。

使用するアプリケーション

Figma、FigJamを主に使用します。使ったことがなくても良いですが、使えたほうがスムーズです。その他、各チームの制作物に応じて、Adobeや3Dソフトなどを自由に使っていただきます。

最後に

架空の世界を考えたり、全体課題がグループ課題に変化したりと、少し変わった授業だと思います。また2025年から始まる授業なので、新井自身、どうなるか分からない部分も多いです。そんな中、課題を面白がって自由な発想で、新しい世界に挑戦してくれる学生をお待ちしております!

以上、授業の紹介でした。何か質問があれば、XInstagramのDMしていただければお答えしますので連絡ください。

それでは学校で!