仕事ができる、キミは嫌いだ。
「俺よりコピー書けるから、お前とは付き合えない」
その昔、好きで好きで仕方なかった人に、そう言われたことがある。
当時、通っていた広告コピーの学校では、
「よいコピーを書いた上位10人に、順位が刻印された金の鉛筆が渡される」
というシステムがあり、嫌でも各々の実力が目に見えてしまっていた。
すでに広告の仕事に足を突っ込んでいた私と、実務未経験の彼。
確かに鉛筆をたくさんもらっていたのは、私のほうだった。
それ以来、彼に言われたその言葉は、
私の中で軽いトラウマになっていった。
異業種の人との出会いも、理解も少ない、広告の仕事。
年上の人や、いわゆる「尊敬できる人」は、概ね既婚者。
好きになるのは大抵、同じ業界の同年代か年下の人だった。
男の人の前でかわいいフリなんてできないけど、
仕事の話ならいくらでもできる。だから、一生懸命仕事の話をする。
合コンで初めて会った人に、
「独立して会社つくりたいんです!」と息巻いたこともある。
結果、相手に「刺激になりました!」と言われて終わる。
または、相手がついてこれずに、引いてしまう。
「男の前では、仕事の話はするな」
何度アドバイスをされても直らない、私の悪いクセだった。
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先日、デザイナーの友人が彼氏と旅行中に
アメリカに一人取り残されたという話を聞いた。
何でもカメラマンの彼氏にずっとやりたかった仕事が突然舞い込み、
急遽、彼氏は日本に帰国することになったという。
そんな彼氏を見て、
「この人を選んで良かったと思った」という彼女。
彼氏にとっても理解のあるいい彼女だし、
私も、すごくいい関係だと羨ましくなった。
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ふと、自分をふり返る。
私は結局、どんな人といるのがいいんだろう?
友人のように、同じ業界で切磋琢磨していける人?
仕事のことで多少引かれても、自分が好きだと思える人?
そんな時、またしても。
ある異業種の男の人に仕事の話を熱く語ってしまった。
気づいた時には、もう遅い。
「しまった、またやってしまった、、、」と思い、
「仕事の話ばっかり、ごめんね」となけなしのフォローを入れる。
すると彼は、「全然いいよ!すごく興味深い!」と言って、
自分でも色々と検索して、コピーライターの話を続けてくれた。
その時ふと思ったのは。
同じ業界で切磋琢磨する相手でなくても、
才能があって尊敬できる人でなくても。
その人自身と、その人の仕事ぶりを尊敬できれば、
そっと応援し合える人くらいの方がいいんじゃないかと。
まぁ、その時そう思っただけで。
またすぐに「一緒に切磋琢磨できる人がいい!」とか
言い出すかもしれないけど。
『クリエイティブの仕事をしているから
付き合う人もクリエイターで、尊敬できなきゃだめ。』
という暗黙の了解のような法則に、
自分が縛られていたことに気づいた、という話。
ちなみに、
「俺よりコピー書けるから、お前とは付き合えない」
と私に言い放った人とは今でも友達で。
たまに冗談で、
「なんで私と付き合わなかったの?」と聞くのだけど。
何度聞いても、
「俺よりコピー書けるから(俺より仕事ができるから)」
と言われるので。
ひょっとして、彼にとってもトラウマな出会いだったのかな?と
思ったり、思わなかったり。
一つ間違いなのは、彼にフラれてよかった。ということ。
今でも大好きな人のひとりであることに、間違いはないけれど。