デビュー14周年の集大成『IU CONCERT: THE GOLDEN HOUR』シネマティック・ライブレビュー
2022年9月、ソウルのオリンピックメインスタジアムで行われたライブ『IU CONCERT: THE GOLDEN HOUR』が期間限定で上映されると聞き、シネマティック・ライブに参戦してきた。
■IUとは?
K-POPの歌姫、国民的な人気を誇るIU。
彼女のことを知ったのは、今から12年前に3rdミニアルバム『Real』を発売した頃。アルバムのタイトル曲『Good day』の3段ブースターの歌声を聞いて、音域の幅の広さ、歌の安定感の良さに驚いた。その当時からK-POPはアイドルグループが多い中、ソロの歌手というのも珍しい上に、バービーはたまたリカちゃんのようなスレンダーなスタイルに、可愛い顔立ち。瞬く間に「国民の妹」と愛される存在となった。
■IUの数々の名曲
その後も『Real Fantasy』『Modern Times』などを発表し、2017年4thアルバム『Palette』では作詞とプロデューサーを務め、タイトル曲『Palette』はFeat.G-DRAGON(BIGBANG)で10万枚近いセールスを記録。
IU自身が作詞をするようになったのもあって、アイドル歌手というよりもアーティスト色が強くなってきて、歌声や表現力は年々磨きがかかっているように感じていたが、このアルバムはMelOn Music Awards、Mnet Asian Music Awards をはじめとする数々の音楽賞を総ナメ。個人的にも今でも聞きたくなるアルバムのひとつだ。
それからもミニアルバムやドラマのOSTに参加し、あの『愛の不時着』の後半、ジョンヒョク&セリのせつないシーンに流れた『Give You My Heart』や、デジタルシングルでFeat.SUGA(BTS)の『eight』を発売している。
■ 『THE GOLDEN HOUR』ライブ内容
オリンピックのメインスタジアムで行われた『The Golden Hour』。映像で見ても、とにかくデカい! その広ーい会場のメインステージから、フェミニンな白のミニドレスの上に衛兵隊の軍服風の赤いジャケットを纏ったIUがゴンドラに乗り、『eihgt』をアカペラで歌い出し、ライブがスタート。第一声を聞いた時から、あの抜けるような歌声に鳥肌が立った。
第1部は『Celebrity』や『Friday』などPOPな明るい曲が中心。そんな中、重大発表が。。。なんと『Palette』は今回をもってライブでは歌わないことを宣言した。『Palette』は当時デビュー10周年、25歳を迎えるIUの心境が絶妙に表現された歌詞で、IU自身も自分が一番輝いていた時と思っているほど、大事にしてきた曲。でも大切な曲だからこそ、この曲に頼ってばかりではいけないと思うようになり、このライブで歌い修めることにしたようだ。最後に歌っている姿からも、曲に対する想いや25歳だった頃の自分を愛おしく懐かしんでいる感じがヒシヒシと伝わってきて、泣きそうになった(笑)。
VCRを挟み第2部は『strawberry moon』からスタート。大きい会場の中に本物の気球に乗ったIUが現れ、2・3階席のそばに。改めてオリンピックのメインスタジアムのやばいぐらいの広さを実感した。気球が月のようで、今までに観たことがないスケールの大きさを感じる演出だった。映像を見ている限りでは、離れた席のファンとの交流を楽しんでいたのかと思いきや、かなり怖かったとMCで告白するシーンも(笑)。
1部同様にPOPな曲を中心に『Blooming』などを歌い、雰囲気も盛り上がる中、またまた重大発表。なんと『Good Day』も今回を最後にすると宣言した。この曲は3段ブースターでIUの名前を広めた曲。今回改めて『Good day』を歌っていた頃と比べると、歌い方というか声の出し方にも変化というか進化しているように感じる(専門家ではないので、違うかもしれないが)。あとこの曲を封印することにした理由には耳の病気を治療中ということもあったのかも?と個人的には考えている。今回の映像ではカットされているが、昨年のライブでは耳管開放症を治療中だと明かしていた。なんでも歌う時に耳の圧力が上がってしまうことで、耳が塞がった感じが続いてしまう病気らしいので、耳のためには最善の選択なんだと理解できる。今回も見事な3段ブースターを決めてくれて、さすがIUと思わずにはいられなかった。2部の締めくくりは、これからの代表曲として記憶して欲しい曲として『Lilac』を披露。この2曲を続けて歌ったから余計に、年齢とキャリアを重ねて素敵な大人になったIUを感じた。
第3部はしっとりとバラードパート。中でも『Through the Night』は不眠症に悩んでいた頃に書いた曲で、『Palette』の中でもお気に入りの1曲。しっとりと丁寧に歌い上げてくれた。
そして第4部はオーケストラが加わり、荘厳な雰囲気に。落ち着いた曲が2曲ほど続き、ラストは華やかなオーケストラから始まる『You&I』。うーんやっぱりこの曲も名曲。12年も前の曲だとは思えないほど、今聞いても古さを感じさせない。アンコール前のラストソングに選ぶぐらい、韓国でもいまだに人気が高い曲のようで、ファンがコールで盛り上がっていた。
アンコールで印象的だったのは『My Sea』。♪그러나~と囁くような優しい歌い出しに始まり、キレイなハイトーンボイスが心に沁みて、IUの歌声に聞き惚れた。
■最後に
昨年のライブ終了時から、神セトリ、『Palette』『Good day』歌い修めと聞いていたので、配信チャンネルでいつかオンエアしてくれないかなーと、観るチャンスを伺っていた中、シネマティック・ライブで観れることになった『IU CONCERT: THE GOLDEN HOUR』。
IUはこれまでに、大切な友人を2名も失ってきた。ひとりはSHINeeのジョンヒョン、もうひとりは大親友のソルリ。『Palette』を発売した年の12月に自死してしまったジョンヒョンに対しては、音楽祭の受賞シーンで哀悼のメッセージを送ったことがあった。それから2年後にはソルリも他界。そんな友人たちの突然の別れに見舞われながらも、本当にがんばってきたIU。
そして今回のオープニング曲は『eigth』。この曲は、MVや歌詞からもジョンヒョンとソルリを連想させる。そんな曲を選んだのは、今は会えなくなってしまった二人への想いをあのステージから伝えたかったのかな…と想像してしまった。
今年はデビュー15周年。これからも素敵な歌声で、新たな名曲が発表されることを心待ちにしている。