見出し画像

デザインのお話。

建築を学び始めたころに、アートとデザインの違いについて触れた記憶があります。
ざっくり言うと、アートは主張や批判、自己表出などの表現のためという側面が強いことに対して、デザインは単に見てくれをよくするということではなく、使いやすさや機能を向上させるなど、実用性を伴うということだと思います。

特に建築は強・用・美と言われるように、機能などに即した美しさを求められるデザインの領域かと思います。

今回は建築の話ではありませんが、機能や実用性について考慮された”デザイン”をご紹介したいと思います。

坂茂がデザインしたトイレットペーパー


トイレットペーパーを勢いよく、くるくると廻していませんか?

2000年に行われた展覧会「リ・デザインー日常二十一世紀」に出展されたトイレットペーパーです。この展覧会は日常的な物品を31名のさまざまなジャンルのクリエーターがデザインし直すというものでした。
このトイレットペーパーの特徴は、見てわかる通り中央の芯が四角いことです。芯が四角いことで、紙が巻き付けられたときに必然的に丸みを帯びた四角いトイレットペーパーとなります。
こうすることで何が起こるかというと、紙巻き器にセットして廻してみたときに芯が円形の場合よりも抵抗が生じて、トイレットペーパーが廻りづらくなります。

あれ?使いづらくなっているじゃないか?と思いますが・・・

このデザインの意図は、省資源の機能が生まれるということです。
普通のトイレットペーパーは、円形の芯で抵抗なく、くるくるとまわり、その勢いに乗って紙を使い過ぎてしまうところ・・・それをあえて使いづらくすることで、紙の消費を抑えるための形をデザインしています。

並べたらこんな感じ?

また、丸みを帯びたかわいらしい形にはもう一つのメリットがあります。運搬時やストック時に積み上げた時に、単純な円形に比べて隙間が少なくなることで省スペースとなることです。

芯の形を変えるという些細なことで、新たな機能を付け加えたことや、使いづらくするというネガティブな要素が視点を変えることでポジティブな要素に反転しているところが秀逸なデザインだなと感じました。

デザインするときは、単にかっこいいからということではなく、なぜその形なのか?その形で起こるメリットはあるのか?など、形によって何が起こるか視野の裾野を広く持ちたいですね。

以上、機能や実用性について考慮された”デザイン”のお話でした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?