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椅子のお話。

建築設計を行っていると当然、家具などのインテリアについても興味がでます。大学でもインテリアデザインという講義で、名作椅子などについて触れた記憶があります。家具やインテリアに興味があって、そこから建築設計の道に入っていく人も多いと思います。

有名建築家が家具デザインをすることも多く、特に椅子をデザインすることが多いように感じます。空間に留まるためのものであることや休息を目的としたもので、最も身体的スケールが求められる家具だからでしょうか、、、

名作椅子のオリジナルは、高価なものが多いのでなかなか手が出ないのですが、、、僕が持っている椅子の話をしたいと思います。


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アルヴァアアルトが1933年にデザインしたスツール60です。

なんだ普通のスツールじゃないか、と思いましたか?

とてもシンプルなスツールでいろいろなところに置かれているので、どこかで見かけたことがある人も多いと思います。家具量販店では、このデザインを模したスツールがお手頃な価格で売られているのもよく見かけます。

アアルトは、フィンランドを代表する建築家で紙幣にも横顔が描かれているような有名な建築家です。

このスツールは、アアルトが国土の3分の2を森林が占めるというフィンランドの豊富な木材資源に着目して、金属家具(バウハウスなどのデザイン)に対抗する家具としてフィンランド産のバーチ材を用いて作ったものです。

キッチンに置いて家事の合間の一息や、ちょっと床に置きたくないものを置いたり、踏み台にしたり、そこまで大きくなく持ち運びしやすいので、ちょっとした場面で役立つような、そんな使い方をしています。


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脚の部分には、通称L-レッグと呼ばれる挽き曲げ技法が使われています。

木を蒸して曲げる曲げ木技法や、薄い板を貼り合わせて曲げる成型合板など木を曲げる技術はいくつかありますが、この挽き曲げ技法は無垢材の曲げる部分に等間隔に切れ込みを入れて、そこへ接着剤を塗った薄板を挟み込んだのち圧着するという方法です。

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アアルトは、無垢のバーチ材をトーネットの曲げ木技法で曲げるとねじれが生じる恐れがあることから無垢材の良さを残しながら、カーブをデザインする方法としてL-レッグという木材加工技術を開発しました。

このL-レッグを用いて最初に作られたのがスツール60だそうです。また、アアルトが創業したアルテックでは、スツール60以外にもL-レッグを用いた家具が多くデザインされています。


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僕が持っているスツール60は、座面がリノリウム貼りとなっています。

バリエーションは、突板仕上げ、ラミネート、リノリウム、ファブリックや革を貼り付けたものなど、いままでにかなりの物がでており、自分の気に入ったものを探してみるのも楽しいかもしれません。

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スタッキングすると、こんな感じで脚が螺旋を描くような立ち姿になります。これだけ、たくさん積み重ねられたら楽しそうですね。

以上、アアルトがデザインしたシンプルで使いやすいスツール60のお話でした。

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