「ロンバケはキャロル・キング」論
2002年、新春放談での会話。
山下:ぼくこのあいだキャロル・キング特集、自分で三週間やってみて、何がいちばん面白かったかというと、いかに大滝さんがね。キャロル・キングに、とくに『ロンバケ』。ナチュラルにぱっとああいうふうに出したときに。キャロル・キングをいかに大滝さんがよく取っているかと思う。そう思うほどにキャロル・キングがよくわかっているんだなということが、ぼくはよくわかった。だって、聴くとわかるんだもん。
大滝:1、2、3は完璧にキャロル・キングですよね。
……
大滝さんの元ネタ探しはナイアガラーの楽しみのひとつだが、この流れは「この曲はこのオリジナルのフレーズを……」というような重箱の隅的視点よりもっと大きなつかみがあるようだ。というわけで、個人的にロンバケ1、2、3曲目のキャロル・キング度を掘ってみた。すると、おなじみの(でもないか、60年代ポップスを聴いていれば聞き覚えのある)キャロル・キングの作品と重ねる楽しみ方が見えてくる。
1曲目というのはもちろん「天然色」だ。プレイボーイズやピクシーズ・スリーと聴き合わせる楽しみもあるが、天然色の雰囲気がシフォンズの「One Fine Day(https://youtu.be/KvyOqKhKWQ4 )」に似ている、というのはどうだろう。
同様に2曲目「Velvet Motel」はスティーブ・ローレンスの「Go away Little Girl(https://youtu.be/k0OrTZd5KM0 )」、「カナリア」は「It Might As Well Rain Until September(https://youtu.be/GbKE0gJETA0 )」、これはディメンションでのキャロル・キングのデビュー曲で、初ヒット曲。ボビー・ヴィーに書いた「Take Good Care Of My Baby」がヒットして、次用に書いたものの似すぎているとボツったのを自分で歌ったものだから、こっちも同じタイプということになる。
大滝は初シングル「恋の汽車ポッポ」のイントロにキング=ゴフィンの「ロコモーション」のタイコを持ってくるくらいこの作曲チームが好きだったわけで、いわゆる「引用」だけでなく、読後感(視聴感?)をダブらせるテクニックも潜ませているんじゃないか、と思うのだ。