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Back To アメリカン・ポップ

クレージーケンバンドの横山剣が会った時、大滝さんの乗っていたクルマはキャデラックのフリートウッド・ブロアムだったそうだ。
それで、というわけではないだろうが、大滝さんがお気に入りだった(と推測される)フリードウッズは1950年代末の男性1人、女性2人のコーラスグループ。
1981年の『NHKサウンド・オブ・ポップス』で大滝さんは「Mr. Blue」「Come Softly To Me」を山下達郎とデュエットしているし、「NIAGARA CONCERT '83」の限定盤CD「EACH Sings Oldies From NIAGARA CONCERT」には1980年12月16日、 LET'S DEBUT AGAIN@芝・郵便貯金ホールでの同2曲(with 長万部キャッツ)に加え、81年のヘッドフォン・コンサートでの「Confidential」が収録されている。長万部キャッツ(シンガーズ・スリー)を従えてのスタイルは、テンポこそ違うがフリートウッズを踏襲している。


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当時白人の男女混合グループが流行で、フリートウッズの翌年にはフィル・スペクターのテディ・ベアーズが「逢った途端にひとめぼれ」を、ザ・ブラウンズが「谷間に三つの鐘が鳴る」をヒットさせている。
テディ・ベアーズは女性リードボーカルと男性コーラス、ザ・ブラウンズはカントリーによくある各人がソロを取り残りがバックへ回る(ったり全員コーラスだったり)という既存のスタイルだったのに対し、フリートウッズは1曲の中でメインボーカルが入れ替わるなど曲に幅をもたせた構成が多く、また男性のゲイリー・トロクセルの甘い歌声が女性コーラスと絶妙にブレンド。ジャズ・テイストのソフトロックな味付け、僕的にはA&Mサウンドのルーツのひとつと捉えている。
パーシー・スレッジやボブ・ウェルチもカバーしている「Come Softly to Me」はメンバー3人の共作。「Mr. Blue」もカバーバージョンが35以上もあるスタンダード・ナンバーになっている。作者のデウェイン・ブラックウェルはエヴァリー・ブラザーズにも(The Ferris Wheel)、ロイ・オービソンにも(Only Alive)曲を書いていて、この辺にも大滝好みの要素が見え隠れしている。
大滝+山下のデュエットがエヴァリーをなぞっているのはご存知の通りだし、オービソンのヒット曲「Only The Lonely」は「Come Softly To Me」にも似たコーラス構成にニヤリ。どれもブリティッシュ・インヴェイジョン前の無垢なアメリカン・ポップスの魅力に満ちていて、大滝さんが目指したロンバケ以降の温故知新なサウンドの温床(!)であることは間違いないだろう。
さて大滝の愛車に戻る。ロールスロイスよりデカいこのアメ車はオーディオがいいことでも知られていて、オーディオフィルとしても知られた大滝らしい名と実のどちらも妥協しないチョイスだと思う。実は本家フリートウッズの名前もこのクルマから取られている。


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