「日常」
高級マンションの前を通りかかると、丁度お母さんと幼稚園児が手を繋いで外に出て来た。
すると突然、「ちょっとストップー!!」という大きな叫び声が上空から響いた。
僕とその親子が思わずマンションを見上げると、10階のバルコニー辺りだろうか、僕の目の前にいる親子に対してママ友のような女性が叫んでいるようだった。
下にいるお母さんもそれに気づき、「どうしたのー!!」とマンションを見上げたまま大きな声で返事をした。
「電話忘れてるよー!!」
「えっ!?うそーっ!!」
2人共まるで悲鳴のような叫び声で会話をしている。
「持って行くよー!!」
下にいるお母さんは自分の鞄に両手を突っ込み、かき混ぜるような仕草の後にまた大きな声で、「持ってるよー!!」と返事をした。
「えっ!じゃあこれ誰のよー!!」
「分かんないー!でも私鞄にスマホあるもんー!!」
「じゃあ、もしかしてタカちゃんのスマホかなー!!」
「そういえばタカちゃん同じスマホ使ってたかもー!!」
「えっ!?じゃあ絶対タカちゃんのだー!どうしよー!!」
「多分気づいて取りに来るよー!!」
「じゃあっいいかー!!」
「うん!それか旦那さんから電話が来るはずー!!」
ほなとりあえずもう大声張り上げんと電話で会話しいな。
友人と焼肉に行った時のことだ。
希少部位の盛り合わせという、二人で牛角を腹一杯食べた時の会計額くらいの肉の盛り合わせを奮発して注文すると、肉ソムリエのような男性店員が大きな皿を左手に乗せて僕らのテーブルにやって来た。
皿の上には高そうな肉が2枚づつ10種類ほど盛り付けられていて、肉ソムリエの男性はそれがどんな部位でどんな食感の肉なのか、そして塩やタレなど、どうやって食べるのがベストなのかを1種類づつ丁寧に説明してくれた。
説明が終わると肉ソムリエは、それではごゆっくりどうぞと微笑み、盛り付けの正面が僕らに良く見えるよう皿を一回転させてからテーブルに置いた。
いやもうどれが何やったか分からんくなってもうた。
BARでの営業が終わって帰りに駅前を通ると、深夜にも関わらず大勢の人がいる。
そのほとんどは酔っ払いで、数人で肩を組み大声で歌いながら歩く若者、人目を気にせず抱き合うカップルや、電話で泣きながら別れを拒んでいる女、植え込みに倒れ込んだまま眠る者まで存在する。
その中でも迷惑なのは、電柱や閉店後のシャッターの前で立ち小便をする酔っ払いである。思考が鈍り羞恥心が薄れ、尿意を我慢出来なくると所構わず放尿する人間が存在する。
先日も深夜に駅前を通りかかるとサラリーマンらしきスーツ姿の酔っ払いが、公衆トイレの外壁に向かって小便をしていた。
それは絶対トイレに入ってした方が自分的にもいいやん。