毎週ショートショートお題 「残り物には懺悔がある」
暗闇の中で目を覚ました。
酒を飲み酷く酔っぱらった記憶だけが頭には残っていて、今がまだ夜なのか、それとも昼間なのかも分からないまま、頭の下にある枕の手触りでここが自分の部屋なのだと認識する。
時間を確認しようとスマホに伸ばしかけた手を、そのまま眼前に広がる闇の中へ差し出してみた。
時間が抜け落ちてしまったこの空間は、まるで世界の終わりのようだ。この静かな世界の終わりに、なぜ僕は生き残ったのだろう。
産まれるに値しない人間など存在しないが、きっと生き残るに値する人間は存在する。何も成し遂げず、何処にも辿り着かず、誰にも与えられなかった僕には相応しくない。
世界の終わりにも、一人きりにも耐えられるけど、空虚な自分を考えると怖くなる。ジェットコースターで急降下した時のような感覚に襲われるが、その落下を止める為に掴む自分が見つからない。
耳を澄ますと、遠くで新聞配達のバイクの音が聞こえる。
世界は僕など気に留めることなく動き始め、残り物の懺悔は、もうすぐ差し込む光によって白々しく照らされる。