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ラジオ×アニメが地域に活気を取り戻す――らき☆すたとラジオ鷲宮の11年

地域の活性化にラジオが活かされている、という話は特に東日本大震災以降よく耳にするようになりました。一方で、地方経済がコロナ禍でも苦しめられる中、閉局に至るローカル局がここ新潟でも出てきています。

県全域をカバーするラジオ局と同列に語ることはできませんが、10年以上にわたり、アニメ作品「らき☆すた」をきっかけに開局したミニFMが、いまもファンと地域を結ぶ活動を続けています。地元の高校生も参加しての週1回程度の放送、そしてわずか半径50メートルしか到達しないラジオ局「ラジオ鷲宮」の取り組みは、ラジオのあり方と地域の関係を改めて考え直すヒントが隠されていそうです。運営を行っている島田さんにオンラインでお話しを伺います。

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島田吉則さん
1966年生まれ/鷲宮町(現久喜市)出身/東京製菓学校卒/島田菓子舗代表/久喜市観光協会アニメの推進プロジェクト会議委員会会長/久喜市商工会鷲宮支所 LUCKY☆STAFF実行委員長/ラジオ鷲宮統括マネジャー

開局のきっかけはファンからの提案

――ラジオ鷲宮が始まったきっかけを教えてください。

島田:テレビアニメ「らき☆すた」が放送された3年後の2010年に、東京都足立区でミニFMを運営していたファンの方から、「らき☆すた」のオープニングに登場する場所のモデルとなった「大酉茶屋」でラジオを放送させてほしいという依頼を頂いたのがはじまりです。最初はその1回限りというつもりだったのですが、とても好評で来月もまたやろう、ということになり、商工会が運営する形となって現在に至ります。

とはいえ、ずっと定期的に放送できていた訳ではありません。2011年の12月~翌年2月の間は休止していました。ラジオの収録・放送を行っている大酉茶屋の2階にはエアコンがなく、夏場の収録は本当に大変だったんです(笑)。商工会の負担でその改装工事を行うための休止期間でした。

――ファンの方からの働きかけがきっかけだったとは言え、そこから地元商工会によるラジオの運営が11年も続く、というのは珍しいかも知れません。なにか下地があったのでしょうか?

島田:ラジオをはじめる以前からも、例えば商工会のセミナーで居眠りしている人を会場のモニターに写して集中を促す、といった変なことをやっていました。また僕自身、小学生のころは放送部で、ラジカセに自分の声を吹き込んだりもしていましたね。とはいえ、ラジオを自分たちで運営して、企画もパーソナリティも務めるというのは試行錯誤の連続でしたが、毎週続けていたら皆楽しくなってきて、現在に至っていますね。

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ラジオ鷲宮の番組表より)

ミニFMならではの「らき☆すた」ファンとの交流

――半径50メートルというのはかなり狭い範囲ですが、どのように盛り上がりを生んできたのでしょうか?

島田:ファンも担ぎ手となる「らき☆すた神輿」がここ鷲宮のお祭り(2008年~2017年までは9月の土師祭、それ以降は7月の八坂祭)で毎年注目を集めます。その時期には多くのらき☆すたファンも鷲宮にやってきますので、ラジオを用いた様々な取り組みを行っています。

たとえば大酉茶屋の2階の窓を開けて、らき☆すたで柊つかさを演じた声優の福原香織さんを招いての公開収録を行った際には、多くの人が集まり持参した携帯ラジオに耳を傾けていました。

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大酉茶屋の近くにいる特定の人をラジオからの音声をヒントに探してもらい、探し当てた人には記念品を渡すといったイベントも行ったりもしました。

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ミニFMは機材も容易に持ち運べますから、大酉茶屋だけでなく鷲宮のいろいろなお店から放送を行い、看板メニューの紹介なども行なえます。わたしは和菓子店を営んでいますが、繁忙期は店頭から放送を行いました。

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――地元の複数の高校の放送部も番組作りに参加していますね。「らき☆すた」放送からはかなり年数も経っていますが、アニメが彼らが関心を持つきっかけになっているのでしょうか?

島田:われわれも地元の高校と一緒に番組作りができないかと検討していたところ、先ほどの公開収録の際、「らき☆すた」ファンでもある高校の先生がやってきておりそこから話がトントン拍子に進みました。そして、放送部にはアニメオタクが多いのです(笑)。「らき☆すた」はもちろん、われわれオジサンとも共通の話題で盛り上がることができます。現役女子高生がアニメネタをどんどん話してくれるので、リスナーのアニメファンも喜んでくれています。2013年からはニコニコ生放送にチャンネルを開設し、同時配信をスタートさせています。ニコニコ動画を見て育った高校生たちはそこも魅力に感じてくれているようです。

――「らき☆すた」をはじめとしたアニメが世代間をつなぐ役割も果たしているのですね。番組の企画も高校生たちに任せているのでしょうか?

島田:そうですね。かなり裁量を持って自由にやってもらっています。高校生なので、かなり「はっちゃけた」内容になることもあるのですが、何かあれば大人が責任を取れば良いと割りきってますね。

後編へ続く)

簡易な機材での原則週1回のミニFM放送。終日びっしりと組まれた番組表や台本、そしてスポンサーがいて成り立っている一般的なラジオと異なり、自由で機動力があるということがよく分かります。後編ではラジオ鷲宮が地域コミュニティに与えている影響についてお話しを伺っていきます。

(※記事中写真・画像は久喜市商工会鷲宮支所より提供頂きました)

※この記事は日経媒体で配信するニュースをキュレーションするCOMEMOキーオピニオンリーダー(KOL)契約のもと寄稿しており日経各誌の記事も紹介します。詳しくはこちらをご参照ください。


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