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🅂19 経験がルールをつくる
「A little dough」 第5章 貯蓄と投資 🅂19 マイルール(1)
前節まで「貯蓄」と比較的身近なリスク資産である「株式投資」について記載してきましたが、これらの記述は結局のところ、私個人の経験を踏まえて構成されているところがあります。もちろん全体としては「メインの仕事を持ち、家計管理の一環として投資を行う方」を想定し、理論的な背景を辿り乍ら組み立てています。ただ私自身もまたその中の一人であったことから、「大きなリスクを避け、シンプルな方法で、安定的なリターンを得る」という考えを、自身の経験に基いて優先するようになっています。その結果私が考える投資の選択肢は、多くの書籍で紹介されている手法と同じで、いたって平凡なものになっています。
➤持っているだけの経験
貯蓄における「SMarTプログラム」の発想や「安全資産+市場インデックスファンド」という投資の為のポートフォリオは、私自身が実際に成果(利益)を実感できているものの代表的な存在です。これらは言わばプラスの経験値ですが、一方で何かと好奇心旺盛だった私は、このほかの貯蓄や投資に関わる失敗(損失)も経験しており、それが反面教師的な効果を生むこともあったと思います。私の場合は金融業界に身を置いたこともあって、こうした失敗経験も踏まえて自分なりのスタイルができ上っていますが、家計管理の一環で行う投資と考えた場合、そこまでの経験はたぶん必要ないと思います。以前記載したように、理論的理解を経験的理解にまで落とし込むのは自ずと限界があるからです。
「安全資産+市場インデックスファンド」というポートフォリオを将来的に投資の軸にししたいという方であれば、①貯蓄によって安全資産を一定の水準まで蓄え②その上でリスク資産の保有比率を徐々に増やしていく、という順序で進めていきます。具体的には安定的な収入をベースに「生活防衛資金+α」の貯蓄ができた方なら、新NISAを使って積立投資を始めればすぐにでも実践できます。あとはやり方次第ですが、実際積立額の増減を決めるほかは、経済評論家の山崎元氏が言うように「ほったらかし」という方法もあるのかもしれません。ただ「やるべきことが少ない」としても、「保有を一定期間継続するという経験」は、大きな意味を持ってきます。
➤経験がつくるマイ・ルール
繰り返しになりますが「安全資産と市場インデックスファンドで行う長期投資」という選択肢は、「シンプルな方法」であることから失敗の確率が低く、「大きなリスクを避ける」ことで安定的なリターンを期待できます。しかし、とはいえ株式投資であることに変わりはありませんので、🅂7でも記載したようにまず「株価の変動に慣れること」、そして「結果によっては何らかの対処を行う」という必要性も生まれます。私たちに必要な経験とは、大きく捉えればこの2点であり、これらは理論的な理解があれば上手くいくというものでもありません。そこでこうした少ない経験によって投資スキルを高めるためには、長期の運用を前提にその目的やいくつかのルールを決めていく必要があります。例えば以下のような項目が、投資の規律(マイルール)として考えられます。
(1)目的と期間の設定 例)長期投資を前提に老後資金を準備する
(2)ポートフォリオの枠組 例)安全資産+市場インデックスファンド
(3)状況に応じたリスク調整 例)リスク許容度を定期的にチェック
(4)定期的なリバランス 例)基準比率から10%程度の乖離で実施
(5)心理的客観性の確保 例)認知エラー・バイアスなどの情報取得
・学習の継続、意思決定環境の整備など
先ず、投資を始めたばかり人にとって必要なルールとしては、(1)と(2)を明確にしておく必要があります。また(3)以降は、その必要性を直ぐに実感できるものでもありませんので、最初からルールを決めても効果は限定的です。
ただ積立などにより徐々にリスク資産への投資を始めた場合でも、何年か保有を続けると「リスク資産の割合はこれでいいのだろうか」、あるいは「リスク資産の含みが大きくないか」といった疑問が沸いてくるようになります。個人差はあると思いますが、変動する株価に日々晒され続けることで、無意識のうちにマーケットに向き合う姿勢が生まれてきます。
結局、「価格の変動を受け入れるという経験」によって、私たちの投資感覚は磨かれ、初めは不要と思われるような「マイルール」であっても、次第にその価値を理解できるようになります。そしてこの経験的理解を土台に、更に試行錯誤と抽象化を経て、私たちは自分なりの「マイルール」をつくっていく必要があるのです。
また「経験的理解」を前提にすると、その期間は最低でも、5年~10年、あるいは更に長い年月を要する可能性もあります。これは本来の視点とは別ですが、こうした点からも私たちにとって最も重要な投資のルールは「長期保有」ということになるのかもしれません。