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幸せとお金の間にあるもの... (2)

▽前回の続きです...おさらいから。下のグラフを見て、私たちの所得が増えても、幸福度はあまり増加していない。増えた所得を幸福感が増加するよう使っていないか、お金で買える幸福の限界値を超えてしまったか、あるいはそもそも相関関係だけで因果関係はないのか…

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▽マズローの5段階欲求を考えてみます。
まず第1段階の「生理的欲求」と第2段階の「安全の欲求」ですが、これらは衣食住を満たすことで、かなりの部分をカバーできます。つまり衣食住に貢献することが明らかな「所得」は、これらの欲求を満足させることに大きく寄与すると考えられます。次に第3段階の「所属と愛の欲求」と第4段階「承認の欲求」ですが、この段階になると所得も一定程度の貢献はあるものの、何よりも個人のパーソナリティやこれに伴う信念や行動力・表現力といった人間としての魅力の寄与度が、圧倒的に高くなってきます。第5段階の「自己実現の欲求」に至っては、仮に所得がなくても金銭的な部分まで人間としての魅力でカバーしてしまうような能力が必要になってくるでしょう。

▽このことから二つの推測が可能です。一つ目は、所得の幸福度に対する寄与度は、マズローが示した5段階の欲求レベルが高度化するほど低下する、二つ目は、その国の人々の欲求段階が平均的にどの次元にあるかによって、その国の幸福度の示す意味合いが変わってくる、というものです。

▽一つ目は、前回の記事で「お金が幸福度に寄与する限界値をこえてしまうと因果関係はなくなる」という感覚的な推測をしましたが、これをマズローの欲求階層説を使って説明してみた、という感じです。

▽二つ目は下のグラフの解釈です。

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このグラフを見る時に注意が必要だと思うのは、幸福度の満点が国によって違う可能性があるということです。ある国はマズローのいう2段階目の欲求、例えば国内が平和で衣食住が満たされれば十分幸福だと受け止めるかもしれません。一方で、ある国では4段階目の欲求、他人から高い評価を受けることが幸せだと考えているのかもしれません。しかしこうした前提は考えずに、アンケートは行われます。これを単純に所得と比較しているのですから、解釈はそれなりの困難が伴います。例えば所得が1万ドル以下の国々の幸福度が、50から90超までと大きくばらつく理由は、この辺にあるのかもしれません。

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