🅂11 年1回、プランを更新する!
「A little dough」 第2章 プランを考えてみる 🅂11
➤巡航速度に乗れるのは何時?
さて前回の試算で巡行速度に乗れたと感じれる時は何時頃でしょうか?
🅂9の内容の一部と🅂10の試算を再掲します。下記はファイナンシャル・プランを巡航速度に乗せるための二つの条件です。
➤前提条件①はクリアしたか
この試算ではご夫婦ともに元気に90歳前後まで生活されることを想定していますが、仮に65歳以降の老後25年間の資金不足額を見積もると13百万円程になります。一方で二人のお子さんの教育費がピークになっている結婚後25年目では、資産残高は5百万円まで減少しますが、その後急速に改善し54歳の時に資産残高は14百万円を超え、老後資金の不足額13百万円を上回ります。更にその先65歳までの新たな貯蓄予想は11百万程度になります。ということは、この時点で巡航速度に乗るための条件①は、クリアしているといえそうです。
➤前提条件②はどうか
さてそれでは条件の②はどうでしょうか。お金をコントロールする力が着実に身についているかどうか、という能力判断は①のように定量的にできるものではありません。この例では、30歳時の4千万円の住宅購入と子供二人の私立の教育費11百万円という負荷を選択をし、30代40代では統計上の平均的な生活を送っていたという試算です。
しかしこのような方が50代以降をどう考えるかは大きく二つのパターンが考えられます。ひとつは、若い頃からの計画や老朽化した家のリフォームなどに5百万程度の予算を当てるものの、日常的には従来通り生活を継続するケース、もう一方は子供が独立した後の資金的な余裕を背景に、徐々に生活水準そのものをあげてしまうケースです。
お気づきだと思いますが、この試算パターンでリフォームの一時費用を5百万円ほど使ったとしてもまだやりくりは可能ですが、一度生活水準を上げてしまうとこれはなかなか下がりません。下手をすればほぼ一生続くこととなり、悲惨な老後生活を招くことになりかねません。②の条件をクリアしているかどうかは「資金的余裕を理由に生活水準を変えない」という大前提を踏襲しているかどうかにかかっている、といえそうです。これは🅂7でも申し上げたことなのですが、「私たちの行動が資金の必要性を生む」、言い換えると「資金的な余裕を理由に行動を変えない」という大原則に則った考え方です。
➤ファイナンシャルプランを毎年更新し続ける
上記の例では54歳の時点で老後の資金不足もほぼ補えそうですし、その後の貯蓄でやや余裕も出てきそうですので、何とか中間地点までこぎつけ、後は巡航速度に乗ってやっていけそうです。しかし「人生はいつ何が起こるかわからない」という不安に駆られやすいのも事実です。年に一度ファイナンシャルプランを更新することで、そうした不安が意味もなく大きくなることも防ぐことができます。
また、新たな変化が起こったとしても、まず現状の家計がどうなっているかを認識しているだけで、最善の判断を行える可能性が高くなります。結果として厳しい選択を余儀なくされることも起こりえますが、そこから逃げ出さずに冷静に受け入れていく覚悟も身についていきます。🅂9で示したような、収入を増やしたり費用を減らすといった修正の選択肢も、現実的な対応策になっているかもしれません。
ファイナンシャル・プランを毎年更新し続けることは、未来を予測し、結果を確認し、それを踏まえてまた新しい一歩を踏み出すことを継続していくことです。この行為は、私たちの「心の持ち様」にも大きく影響していきます。それは、結果に拘り過ぎずに事実を素直に受け容れていく力と、そこから未来に向かってポジティブにチャレンジしようとする力を、培ってくれるからです。