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少数株主締出目的の株式併合の効力

はじめに

判例時報や、ジュリスト、判例タイムズなどの法律系雑誌を読んだ際、何もしないとすぐに忘れてしまうし、かといって細かくまとめると、時間を食って続かないので、生成AIを適宜使って簡単にまとめつつ、noteに書いていき、Evernoteでも検索できるようにしておきたいと思います。
どうか、習慣として続きますように…。

会社法上の株式併合が株主の締出しに用いられる場合、株主平等原則違反に該当するかどうか、目的の不当性に基づく株主総会決議取消事由に該当するかどうかを判断した事例です(札幌地判令和3年6月11日金商1624号24頁)。

事案の概要

  1. 当事者

    • 被告Y:貸ビル業等を営む非上場会社(株式譲渡制限あり)。

    • 原告X:Y社代表者Aの義理の甥で株主(1500/40000株保有)。

  2. 事実関係

    • 令和2年3月6日:臨時株主総会でX以外の株主全員の賛成により、1569株を1株に併合する特別決議を実施。

  3. 請求と主張

    • 令和2年4月14日、Xが①主位的請求:決議無効確認(株主平等原則違反)、②予備的請求:決議取消し(特別利害関係人による著しく不当な決議)を求めて提訴。

    • Xは、①株式併合には正当な事業目的がない、②代表者Aの個人的感情によるX排除が目的と主張。

判旨

  1. 株主平等原則違反について

    • 株式併合による少数株主の締出しは会社法が予定する制度であり、併合理由について内容・当否の制限を設けていない(会社法180条4項)

    • 平成26年改正で、①事前開示手続(182条の2)、②事後開示手続(182条の6)、③株主による差止請求(182条の3)、④反対株主の株式買取請求(182条の4)の少数株主保護規定を整備済み。
      → 締出目的の株式併合も、適切な保護措置があれば許容される

    • 株主平等原則(会社法109条1項)への適合性

      • 本件では、全株式を一律の割合(1569株→1株)で併合するもので、効果が全株主に平等に及ぶため、原則違反なし

      • Xは「排除目的」以外の違反根拠を示せていない

  2. 著しく不当な決議について

    • 特別利害関係人該当性

      • X以外の株主は、決議によりXは株主の地位を失い、他の株主の支配権が強化されるため、特別利害関係人に該当する可能性がある

    • 決議の当否

      • 株式併合の目的は、①会社経営の転換期における意思決定の円滑化が必要であり、②安定株主による会社支配権確立という経営上の必要性があり、③代表者Aの個人的感情のみに基づく排除とは認められないため、正当

  3. 裁判所の結論

    • 正当な事業目的が認められる以上、「著しく不当な決議」には該当せず、少数株主保護の制度的保障もあり、決議の効力は否定されない。主位的請求と予備的主張いずれも棄却。

メモ

  • 少数株主の締出制度の法整備
    従来、株式併合による締出しは、対価に不満がある株主も総会決議の効力しか争えなかったが、平成26年改正により、事前・事後開示、差止請求、株式買取請求等の保護制度が整備され、適切な保護措置を備えた制度ととなり、少数株主締出しそれ自体は株主平等原則に違反しない。

  • 「著しく不当な決議」の判断基準(会社法831条1項3号)
    公開会社では適正な対価があれば締出し自体は不当とならない一方、閉鎖会社では株主権に経営参加の期待や報酬源としての意味があるため、より慎重な判断が必要。
    対価の公正さ、支配株主の持株比率、支配株主と少数株主の関係、締出しに至る経緯、少数株主の権利行使状況などが検討事項。
    本判決は、閉鎖会社における「正当な事業目的」の判断において、会社との度重なる紛争の存在、会社価値毀損の可能性(Xの株式売渡請求や会計帳簿等閲覧請求もあった)、経営上の意思決定円滑化の必要性等を総合考慮し、単なる個人的感情による排除ではないとした。

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