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劇場版ドラえもん『のび太の創世日記』所感

のび太が“神様”となって地球を作る話

2025年2月1日〜3月6日、東京・神保町シアターにて開催されている「ドラえもん映画祭2025」で、劇場版ドラえもん『のび太の創世日記』を観てきた。

本作は1995年3月公開。僕は当時まだ5歳になる手前で、劇場では観ていないため、公開の1年後、地上波で放送された際にテレビで観たのが初となる。主題歌の海援隊「さよならにさよなら」は、そのときから好きだったのを覚えている。

本作は、のび太が“神様”となって太陽系(特に地球)を作る話だ。現実に似せて作ったはずなんだけど、生物の進化を早めるためにドラえもんが使った「進化退化放射線源」のライトに小さな虫が当たったことで、哺乳類とともに昆虫も独自の進化を遂げた別次元の“地球”が生まれることになる。

“小さな羽の妖精”伝説

本作の中で興味深いのは、のび太が作った地球では、各地に「小さな羽の妖精」や「地底世界」の伝説が語り継がれているということだ。

そうした伝説の元になったのは当然、のび太の地球において誕生した昆虫人だ。人の目から逃れて地底で暮らしている彼らが、何かの拍子に人間との接点を持ち、それが神話や伝承に繋がったものと考えられる。

実際に、のび太が訪問した“自作の”日本でも、「白神様」と呼ばれる巨大ムカデが登場したり、お爺さんが昆虫人の子どもを助ける「舌切り雀」そっくりの逸話があったり、昆虫人たちが鬼の姿に擬態して現れたりする。

旧約聖書「ノアの方舟」が示唆するもの

本作はフィクションだけど、現実の世界にある神話や伝説も、元々は何らかの実話がベースとなっている可能性は否めない。

例えば「ノアの方舟」は、実際に起こった大洪水の教訓として生まれたとする説がある。旧約聖書のものが有名だけど、世界各地に同じような逸話が残っているらしい。

氷河期が終わって海水面が大幅に上昇した際、世界中で「海に呑まれてしまった地域」が発生した。これが元になり、各所で生き延びた人々が“後世への警告”のために作った話が語り継がれて、洪水神話になったのかもしれない。

伝承の裏に潜む“真実”に惹かれる

こうした世界的に有名な神話に限らず、民間伝承として残っている「科学的見地からするとあり得ない話」には“元ネタ”がある場合が大いに考えられる。

柳田國男(1875〜1962)や南方熊楠(1867〜1941)といった民俗学者が探究しようとしたのも、そうした“とんでも話”の裏に潜む真実や真理だろう。伝承自体は“真実”でなくとも、そこには何かしらの“歴史的事実”が投影されているかもしれないのだ。

だからこそ、多くの人が神話や民間伝承に惹かれるのだろうし、僕自身も“歴史ロマン”を感じずにはいられない。

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