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【詩】セーヌ川

私が貴族の養女になり
久しぶりに街に行って
私がおはようと言うと
街の皆は目を逸らした

私が平民だったとき
通りを歩いていると
街の誰もがおはようと
声をかけてきたものが

貴族の娘らが寄宿する
修道院に預けられた朝
私がおはようと言うと
娘らはふんと切り捨てた

修道院の生活に馴染み
朝のミサに向かうとき
私がおはようと言うと
誰もがおはようと言った

フランス革命が勃発し
怒号と炎と憎しみと
人々は平民も貴族も
正気では無くなった
誰もがこの野郎と叫んだ

平民も貴族も沢山死んで
燃えるパリの真ん中で
私は花束を右手に握り締め
断頭台にひざまづくマリーを見た
間もなく歓声が上がった

少しの安堵感と
少しのやましさと

私は一人セーヌ川に
花束を投げ入れた
さよならと言った

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