【詩】ヴァルキューレ(幻獣詩篇:1)
戦死者を選別する乙女たち
死者を蘇らせ宴に誘い饗し
猪肉と蜂蜜酒と躰を捧げる
水煙草やマリファナの匂い
ガラスが割れる音や喘ぎ声
東京駅から次の東京駅まで
無言の空間に皆は隣り合って
無限の振動に皆は委ね合って
男が戦士である必要性も
女が女神である必要性も
無くなった筈の西暦2023年
山手線内側の迷宮的廻廊
最先端都市の最新モデルは
流血沙汰への懐古みたいに
ポリティカル・コレクトネスや
過剰な多様性への配慮に対する
カウンター的寄り戻しの様相で
世界各地の都市の喧騒は総じて
東京都心の最終戦争に憧れる
乙女たちは男に戦場への回帰を先導し
剣を交える金属音も依然に際限無く
オーディンが統べるヴァルハラ廻廊
戦死→肉・酒・煙草・薬・女→戦士
其れで男たちはそもそも満足か