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詩:『曇天』

『曇天』

昨夜から激しく降り続けた
霙(みぞれ)がはたと止んで

薄い煙の様な曇天は
年の名残りを抱擁している

ああ薄雲よ 大晦日の
空想能う限り全ての虚しさよ

九月に去っていった愛しい
あの人の横顔をただ惜しんで

曇り空が晴れるような日常の
去りし僥倖を取り戻してくれ

恒例の年末行事の嚆矢へ
時間を巻き戻すように

原始の衝動に身を任せた
欲望の日々を甦らせてくれ

あの日の熱情は沈着へ
あの日の混沌は秩序へ

電線にスズメたちが並んで鳴いて
時の流れを惜しんでいる

赤貧の飢えた子供のように
あぁと思わず空を仰ぐ

月が直上の灰色に
錐で穿った穴のようだ

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