【詩】夜の海
あなたに寄り添い眠るとき
わたしは夜の海を幻視する
二人を運ぶ汽車が海上を行き
星々は震えて恐々としている
水面を渡る線路はギラつき
行き先は容易には理解できない
未知のものを前にして
矜持を揮うのが人ならば
わたしは何処までも人で在り
あなたは恐らく生き物ですら無い
唇を僅かに開き項垂れるとき
白痴の如くにわたしが成るとき
火室に焚べる石炭が失われても
あなたは結婚指輪を焚べるだろう
誓いを燃料に夜の海を行く汽車は
愛が燃える蜃気楼である証左だ
あなたと躰を累るとき
白痴の如く幻視する