【詩】バロメッツ(幻獣詩篇:8)
陽へ伸びる樹木の美しさに
羞恥や媚態などの誘惑が
介在する余地はあるか
黄金の毛に包まれた羊たち
飢えた狼たちの牙にかかり
痛苦と快楽の責め苦に悶える
君の迷妄の耽美よりは
植物のような単純な美
そのほうが潔いだろうね
狼たちとて美を望んだわけでなく
其れは金の滑らかなドレープウール
畝るドレープの手触り
いとしいぃ……くるしいぃぃ……
くるしいぃ……いとしいぃぃ……
畝る根元に液体が滴る
おまえはまだわかすぎる……
おまえはもうひとづまだ……
手がワナワナと震える
項にブルブルと戦慄する
脚はガクガクと瓦解する
周囲の雑草を喰い散らかし
自らも何れ植物然と成るを知る
淫蕩に惑う全ての狼へのカウンター
バロメッツ
魔性
金毛の羊
わたしの求めて止まない破滅