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暁に薮を睨む

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刀篤(かたなあつし)の厳選した詩集です。
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2024年7月の記事一覧

【詩】黒雲

【詩】黒雲

ビル街に風上を何気なく見ると
低空にドス黒い雲が分厚く在り
湿度の高い茹だるような世界に
其の雲が早送りのように迫り来て

皆が福音を待ち望んで居るのだ
言うなれば 善悪の区別、法、検閲、
秩序、理念、常識、歴史、等に超越し
雷雨は何時もビル街に平等に降り注ぐ

焦燥感を胸騒ぎが埋め合わせてゆく
草蔭のライオンがインパラの子供に
狙いを定めて忍び寄るときのように
飢餓が心の高まりに連結されてゆく

【詩】ステップ

【詩】ステップ

憎しみが続くこと
きみは其れが恐い

苦しまず死ぬこと
ぼくは其れを恐れない

世界が消えることは?

神様たちに理解して貰おうなんて
わたしたちは思ってなかったけれど

あなたたち神様は2階から戦場を見下ろし
円卓に睡眠薬を106錠ほど並べているんだろう

そういうのをステップって云うこと
ぼくたちはずっとまえから知ってた

ずっとまえぼくが軍医志望だった頃から

ぼくたちわたしたちは明日死ぬか

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【詩】グラディエーター

【詩】グラディエーター

骨を含んだこの畑に種が育ち
帳簿に余る記憶を嫌でも囁いてくる
敗者の手招きをはね返さんと
此処の土はツンと澄ましている
地面が地面自体を律している
わたしはわたしの実存の確かさを
検める様に麦穂の先を撫でる
太陽が今 畑の直上に差し掛かり
わたしは新しく小さな刺傷を見つけた