マガジンのカバー画像

暁に薮を睨む

213
刀篤(かたなあつし)の厳選した詩集です。
運営しているクリエイター

2024年1月の記事一覧

【詩】調和

【詩】調和

君の凪の表層の細い腕に
正しさを委ねる居心地良さ

僅かに揺らいでいる水面に
幼心の砂城が囲われている

君が苦戦している髪質
手に余る家畜を制する様

君が創造し続ける髪型
君の美しさの表出の様

些か情けない話だが
僕の嵐の深層は甘い

些か情けない話だが
君の拘りに怯えている

君は落ち着いている
君の躰は微動している

君は戦いに微笑する
君は懐古している

些か情けない話だが
僕はとても

もっとみる
【詩】絶望したら読んでね

【詩】絶望したら読んでね

身体が強ばっているね
手汗も酷いのねそれなら
小指だけで繋がりましょうか
それとも腕を組みましょうか

誰もあなたのことを知らないわ
大衆も部長もお医者さんも
誰もあなたを気にかけてないわ
あなた以外の誰もまったくね

ふふふ

絶望も過ぎると全てを
俯瞰で捉えることが
出来るようになるわ
それまでの辛抱よ

しばらく待ってみてね
けして早まらないでね
恐れることはない絶望したら
10回呼吸して名

もっとみる
【詩】世界

【詩】世界

そいつは世界と名乗って
タクシーに乗車すると
何処かへ行ってしまった
そいつが初めて此処に来た時
誰だ!と問う声に俺だ!と
答えたものだが正直言うと
俺では何も分からなかった
そいつは何事に於いても
全く普通のやつだった
何が得意不得手ともなく
美しくも醜くもなく
高慢でも謙虚でもなく
ただ奥行きのあるやつだと
だんだん皆が理解し始めた
ただ者ではないと皆が思った
そいつは常に葛藤していた
時間が

もっとみる
【詩】ファッション

【詩】ファッション

密航タンカーの甲板の
大西洋に吹く蒼い風

サーベルタイガーの
灰色の脆い化石

岩盤が吸い込んだ
ダブルの透明な愛液

あなたは知っている
世界のあらゆる光を

ファインダーが切り取る
幕を閉じる瞬間の飛躍を

キャットウォーク上の
白い衣装の思慮深さ

闇が初めから纏っている
シンメトリーな冷徹さ

時間が
跳躍した

わたしは一眼レフの
シャッターを切った

【詩】竜と龍(幻獣詩篇:9:10)

【詩】竜と龍(幻獣詩篇:9:10)

【離縁】
ティラノサウルスやトリケラトプス
プテラノドン等 竜の祖先どもが
草原や空に悠然と幅を利かせながら
おれは おれは と息巻きながら
緩慢な血流を滞りなく妻に注ぎ込む

全てが他者に調律された
ただの夢に過ぎないという
形而上学的な感じかたを
妻は尊重してはならない何故なら

死ぬからだ

【結納】
八百万の神々が生まれる以前から
龍の祖先たちは荒れ地を徘徊し火を吹き
砂漠ではハンミョウが

もっとみる