マガジンのカバー画像

暁に薮を睨む

213
刀篤(かたなあつし)の厳選した詩集です。
運営しているクリエイター

2023年8月の記事一覧

【詩】純潔(美徳詩篇②)

【詩】純潔(美徳詩篇②)

わたしはメリーゴーランドの
白馬に跨り疾駆する光線のICON
たぶんちょっと怒っているんだ
でも勘違いしないで人は大好き
紅い血と蒼のリネンが綺麗だし
パフェと音楽を生んだ種属だから

わたしは怒っているんだと思う
生命を磔にするものを前にして
みんな立ち尽くし怒っている
儘ならない大人向けの遊園地
入場料の馬鹿高い遊園地
ジェットコースターに病する

夜にはお城をライトアップ
パレードに先頭を切

もっとみる
【詩】暴食(大罪詩篇⑥)

【詩】暴食(大罪詩篇⑥)

飢えを耐え忍び
砲火をくぐり抜け
精神科の隔離病棟で
バナナフィッシュに
うってつけの日を読み
それなりのPTSDを
患ったこともあったが
文学サロンの会食で1度
ステーキを品評したのが間違いで
やがて自分の食ったものが
美味いか不味いかそれだけしか
判別できない老兵と成り果てた
生き抜いたということは
命を食い尽くしたということだ
軽く見積もったということだ
いつか全てを返済しなければ
命を命と

もっとみる
【詩】傲慢(大罪詩篇⑤)

【詩】傲慢(大罪詩篇⑤)

とある国家の話
社会に弓引く教育を
国家の正義は洗脳と呼び
社会に組み込む洗脳を
国家の正義は教育と呼んだ
社会の維持それ自体が
国家の正義の主な職務で
それは所謂傲慢の悪魔の
為せる技と同じく
正義とは
主体の言語で記された
禁書であり
人であり社会であり
正義であり悪魔である
たったそれだけの
ちょっとした魔界の真理
それを理解する子等が
地獄や煉獄に魅了され
やがて成熟し誰もかれも
例外無く

もっとみる
【詩】色欲(大罪詩篇④)

【詩】色欲(大罪詩篇④)

わぁぁーーむ わぁぁーーむ
真っ黒な雲が唸っている
街路樹が風に吹き晒される
道路に面して6機並列された
室外機たちがフル回転している
走るバスの最後部の私の隣席に
若い女が蹲って眠りこけている
先の停留所で乗り込んできたのだ
とてつもなく美しい女だ
この上なく無防備な女だ
私は身を乗り出し女に
覆いかぶさって髪に触れ
彼女の唇をぬめりと……
女が目を覚ます
「今、何をしようとしたの?」
とてつも

もっとみる