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刀篤(かたなあつし)
2020年12月31日 07:23
『曇天』昨夜から激しく降り続けた霙(みぞれ)がはたと止んで薄い煙の様な曇天は年の名残りを抱擁しているああ薄雲よ 大晦日の空想能う限り全ての虚しさよ九月に去っていった愛しいあの人の横顔をただ惜しんで曇り空が晴れるような日常の去りし僥倖を取り戻してくれ恒例の年末行事の嚆矢へ時間を巻き戻すように原始の衝動に身を任せた欲望の日々を甦らせてくれあの日の熱情は沈着
2020年12月13日 10:52
『雪道』大雪警報が23区に発令された夜人生で一番の親友を殴って僕は東京を去った僕が何かを失うときはいつも大雪が降る列車が止まったとき涙がつと零れ落ちた水槽のような列車内共鳴する音叉のように乗客たちもみな鼻を啜り泣いているように思えた親友を殴ったときと同じ類の痛み僕は思い出した父を殴ったときの拳と心の痛みもう帰るところなんて何処にもあるもの