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暁に薮を睨む

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刀篤(かたなあつし)の厳選した詩集です。
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2020年8月の記事一覧

詩:『線』『線Ⅱ』

詩:『線』『線Ⅱ』

『線』

瞬間を彩るこの永遠を
今日もあなたに伝えられない

ため息を繰り返すほどに
祈りは純度を増してゆく

足もとのこの白線をいつも
わたしは越えたいと思っている

あなたと見ている
この残酷な夜空を

受け入れることなんて
できはしないだろうに

『線Ⅱ』

今朝の天気予報
終日快晴風は強い

あなたの為に積み上げる
祈りの純粋確率は99%

瞬間を彩るこの永遠を
どうしてもあなたに伝えられ

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詩:『不滅の音楽』

詩:『不滅の音楽』

『不滅の音楽』

君は君自身が
生まれた意味を
知っているか

長い船旅の途中
高い断崖の上から
少女の声が響いてくる

暗礁に乗りあげ
待ち人を残して
冷たい水面に
消えるとしても

それは気高く残虐な
渇きを潤す不滅の音楽

(言葉があり)
(旋律があり)
(歌声がある)

欠けるものは何もない
帆をあげ続けるのだ
それは魅惑のローレライ

詩:『ゲリラ豪雨』

詩:『ゲリラ豪雨』

『ゲリラ豪雨』

分厚い雲が
碇を下ろした
午前4時59分

徹夜明け温い朝
世界に意味はあるか?

環境の存在意義
ゴウゴウ響く雲の内部
閃く電流が更新する
生命の必要意義

性に意味はあるか?
私はかなぐり捨て濡れる

午前5時02分
無垢な身体も剥き出しの心も
執着も矜持もプライベートも

詩:『優脈』

詩:『優脈』

『優脈』

世界中の優しさをキンキンに冷やして
500mlのペットボトルに詰めて
小一時間の見物に出かけよう

花壇やビルや橋やアスファルトに
優しさを注ぎながら歩く
世界中の人々を祝福しながら歩く

そして道すがらの側溝には
見事な優脈が整えられていて
このペットボトルは空にならない
(むしろ増える)

詩:『ハリケーン』

詩:『ハリケーン』

『ハリケーン』

傷つけて
殺したのね

だからハリケーンが来ても
人に嫌われるのよ

何回も 何回も 何回も 何回も
冷たいコーラを飲んで

失望したのね
怒ってるのね

こめかみが痛いんでしょ
くるぶしが重いんでしょ

アニメを見たでしょ
音楽を聴いたでしょ

Liveを見たでしょ
本を読んだでしょ

もう充分でしょ
もう疲れたでしょ

愛してるわ
欲情もするわ

そしてもうすぐ
ハリケーンが

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詩:『LIVE』

詩:『LIVE』

『LIVE』

躰から蒸発する汗の匂い
フロアは熱に歪み

発情するiconは
悶え躍り濡れる

血管内を巡る鼓動は
自ら選び取った現実と
シンクロしている

主体性の無い世界など
生きる価値も無いだろう?

感性
欲望
意志の力

それらは生存戦略の
PDFファイルを
参照できるPassCode

生きることは
歌うこと

爆音musicをかき鳴らして
鋼の如く練磨する

チャンスを掴め!
ステ

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詩:『熱帯夜』

詩:『熱帯夜』

『熱帯夜』

温い夏が僕に吸い込まれる
肺は黒く腐っていく

呼吸をしなきゃ

夜風が僕に吸い込まれる
酸素はどんどん目減りする

深呼吸をしなきゃ

息を吸うと喉につっかえる
息を吐くと心臓が嚥下する

呼吸をしなきゃ

こんな風にして二酸化炭素が
街を覆い埋めつくすのだろうか

深呼吸を……

地球は全て夏の夜に溺れて
滅亡してしまったのだ

詩:『夢と現実』

詩:『夢と現実』

『夢』

ラジオ会館に
夏の反射光
街路樹は
陽炎に萌え
タイツの中で
擦り傷は蒸れる

今日も賑やかな
通りに立って
ご帰宅ください
ご主人さま
よろしくお願いします
ご主人さま

一陣の風に
チラシが舞い
わたしはひたすら
それを追っている

『現実』

メイド服は
被虐心のicon
絶対領域は
視線に悶え
意識し過ぎて
太股は湿る

今日もフロアに
這いつくばって
お帰りなさいませ
ご主人さ

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詩:『ヒール』

詩:『ヒール』

『ヒール』

朝9時30分
スーパーの休憩所

わたしの背後から
コツコツと足音が響く

彼女が窮屈に押し込んだ
呼吸と心臓の鼓動

憂鬱・倦怠・情欲・美貌

そんな気高さを踏んで
毎日が始まる

詩:『夜』

詩:『夜』

『夜』

茂る草のシルエット
黄泉の国の此岸か

煙る闇既に深く
温い風はRequiem

上昇する光球
君の姿を帯び

言葉を失った瞬間
夏は饒舌に薫った

群衆の影愛しく
りんご飴酸っぱく

愛しい君の
汗ばんだ寝床

賑やかな
夢の渦中へ

詩:『未明』

詩:『未明』

『未明』

朝露に濡れた草を

裸足で踏んで

わたしは蘇る